マツダ技報 2021 No.38
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(1) 篠田雅史ほか:VOCとCO2を同時削減する新塗装技術「アクアテック塗装」,自動車技術,Vol.70,pp.77-82(2016)―119―【B】Cooling 加藤 雄 4. 高効率リサイクルシステム5. 成果6. おわりにFig. 7 VOC Recovery Oven SystemFig. 8 VOC Recovery Oven System Energy [t-CO2/ year]High Effciency Heat Pump 【D】Vapor-liquid Separation 【E】After Treatment】After Treatment Condensed Water Drain Heat Exchanger Closed System 【C】VOC Adsorption 【A】Water Uptale Water UptaleSpray Heat Exchanger Heat Pump Heat PumpHumidity Sensor Combustion Exhaust Gas Treatment Oven System VOC Recovery Oven System Hot Air Heating VOC Recovery Condensed Water Treatment  [A]の水蒸気の取込みでは,乾燥炉内に存在する水蒸気を有効活用した。乾燥炉内の湿度分布を調査し,最も高湿度(22g/kg(DA))であった乾燥炉前半部の空気を冷却装置に引き込むことで,効率的に水を取込めるようにした。これには,乾燥炉起動直後など炉内湿度が低いケースも考慮して,水を自動補給する補助システムを装備した。また,[B]の冷却で奪った熱は高効率ヒートポンプを活用して,[E]の処理後空気の再加熱に使用しエネルギーのリサイクルを行うことで,システムの省エネルギー化を可能にした(Fig. 7)。 これらにより,燃焼式排気処理の廃止とクローズドシステムによる排気ガスの炉外排出ゼロを実現して,塗装乾燥炉におけるCO2とVOCの同時削減を達成し,燃焼により発生していた煤塵・NOxも削減した。なお,回収した凝縮水は社内水資源再生場で,化学・生物処理により無害化して工場の外へ放流している。社内水資源再生場で要するエネルギーは,燃焼式排気処理装置比で1,000分の1以下である。 本システムを宇品工場 電着乾燥炉へ導入する工事を2019年4月に着工し,同年8月よりVOC回収装置の段階的導入を開始した。試運転調整(従来式とVOC回収式の併用運転)期間を経て,同年12月にVOC回収式 乾燥システムへ完全に切り替え,燃焼式排気処理装置を停止した。 塗装乾燥炉・排気処理設備のエネルギー削減により710t/年(CO2換算)のエネルギー削減を達成した(Fig. 8)。これは,燃焼式排気処理システム比で63%の削減となる。また,乾燥炉排気のゼロ化により,VOC,臭気,NOx,煤塵の排出ゼロを実現した。 マツダには,今回導入した燃焼式排気処理装置以外にも複数の同種設備をもっており,拡大展開を計画している。また,当システムは,水を利用することから5L/minのVOC成分を含んだ排水が発生する。現在は,社内水資源再生場で無害化して排出しているが,排水に含まれる成分の99%が塗料成分と同じであるため,排水の成分分離などによる再利用の可能性を検討していく。 この論文は一般財団法人 省エネルギーセンター 月刊省エネルギー2021年2月号に投稿した内容に追記・転載したものである。■著 者■寺本 浩司参考文献篠田 雅史

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