―121―2.5 NEDO調査事業の取り組みテーマ 本調査事業では,完成検査ラインの全検査項目(172件)より,AI等のデジタル技術を活用した自動化に対して技術的に見込みがある検査項目(72件)を分類し,更に中長期にわたり効果が見込めると想定される10テーマを選出した(Fig. 1)。All inspections (172items) [Target 10themes] (a)Tire inspection (b)Lamp inspection (c)Side slip inspection (d)Meter inspection (e)Brake inspection (f)Vehicle control system inspection (g)Fuel consumption and Exhaust gas measurement (h)Inspection for measuring electricity consumption (i)Indicator inspection (j)Engraved plate inspection 3.1 タイヤ仕様検査について 現行のタイヤ仕様検査は,自動車の4輪に対して,完成検査員が足腰を曲げた屈み作業で,目視によりタイヤに刻印された仕様(メーカー・シリーズ・タイヤサイズ)が型式指定制度に基づいた届出申請書と相違がないか確認している(Fig. 2)。 この検査においても検査員は,ゴム刻印の僅かな段差(約0.5mm)からマークや文字を読み取り,メーカーごとに異なる字体や,水滴や異物の付着など,さまざまな変動に対して,人の高い補正能力(視覚,記憶,判断)でフレキシブルに対応している。3. タイヤ仕様検査の自動化 Technologically promising automation (72items) Technologically difficult automation (100items) Fig. 1 NEDO ThemesFig. 2 Tire Inspection3.2 タイヤ仕様検査自動化の課題 タイヤ仕様検査の自動化において,検査員と同等以上の検査精度を実現するためには,人の精緻な視覚認識や状況判断を自動検査システムに組み込まなければならな業(株),マツダ(株)の5社共同の体制で,完成検査項目の自動化の可否及び自動化に必要な要件について,各社でテーマを分担し実施調査を行った。2.2 完成検査について 現行の自動車の完成検査は,国土交通省が定める自動車型式指定制度に基づき国に代わって自動車メーカーが行うもので,現行の法令(※1)(自動車型式指定規則第7条)では,完成検査は完成検査員が実施することとされている。マツダの完成検査工程においても,教育・訓練された高い能力(視覚,聴覚,触覚,判断力等)の検査員で完成車両の仕様検査,機能検査,外観検査等を行っており,極めて高い検査精度が担保されている。※1 現行の法令 2021年8月現在2.3 完成検査自動化の課題 現行の検査員による完成検査は,生産工程で発生するさまざまな変動にもフレキシブルに対応し,高い検査精度を担保している。当然ながら,自動検査システムが不具合品を誤って良品と判定し,市場流出させることはあってはならないため,完成検査自動化の大きな課題として「検査員と比較して同等以上の検査精度の達成」がある。2.4 完成検査自動化の考え方 本調査事業においては,前述の「検査員と同等以上の検査精度」を「合理的に想定される範囲において機械と検査員(人)で不具合品の流出防止を確実に保証するもの」と定義した。これは機械だけで100%の検査精度を追求するのではなく,AI判定が少しでも曖昧な判定結果の場合には人に判断を委ねて,検査員が実物状態を確認することで不具合品の流出を確実に防止する考え方である。 この考え方に基づき自動検査システムの判定精度の達成目標を以下とした。 (1)不具合品の流出率=0% (2)判別の誤謬率=0%となる適切な分類閾値設定 (3)検査精度の維持管理に必要な項目の要件化下記に「流出率」,「誤謬率」,「不明」の定義を示す。 【流出率】検査システムが不具合品を誤ってOK判定する確率(実物の状態と不一致の判別数÷全サンプル数×100) 【誤謬率】検査の判別結果(不明を除く)が「実物の状態」を誤って判別する確率(実物の状態と不一致の判別数÷(全サンプル数-不明数)×100) 【不 明】検査の判別結果を分類した結果,閾値未満のもの この中で,マツダは「タイヤ仕様検査の自動化」の実証調査を担当し,自動化の実現可能性,自動化に求められる要件,及び想定効果の検証を宇品第2工場完成検査ラインにて行った。
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