マツダ技報 2021 No.38
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(2)AIを用いたタイヤ仕様判別 本取り組みでは,AIの深層学習の1つ「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」を用いた自動検査システムで「人のフレキシブルな状況判断の代替,間接工数増加の抑制」を目指す。 CNN判別モデル(※2)を用いた仕様判別をタイヤメーカーの事例(Fig. 6)で説明すると以下のとおりである。➀生産工程で取得したタイヤ画像を判別モデルに入力➁判別モデルは学習済タイヤメーカー全てのスコアを出力➂最も高い出力スコアのタイヤメーカーを判別結果とする―122―Manufacturer Series Tire size Tire rotation +1.5Laser profiler mm Tire making 0 -1.5Tire 3D Data 0 Lumin- ance 255 Manufacturer Series Tire size Fig. 3 Camera Image (Tire)Fig. 4 Tire Side Measurement and ImagingInput data CNN model Fig. 5 Tire Specification ImageOutput Score Fig. 6 CNN Model (Manufacturer)(TOYO) TOYO: 98.8/100 (AI Answer) YOKOHAMA: 0.8/100 DUNLOP: 0.4/100 本取り組みではOxford大学の研究グループが提案した16層からなるCNNモデル(VGG16)を使用するい。また,一般的な画像処理技術による目視検査自動化の事例は多数あるが,人の視認と判断のルール(画像処理)を設計する必要があり,導入後に新しく検査対象が追加されるとフレキシブルに対応できず,ルールの再設計や維持管理のための間接工数が増加してしまう課題がある。 これらの課題「検査員の精緻な能力の代替」,「自動化による間接工数増加の抑制」に対して,本取り組みでは,以下の開発コンセプトで課題解決に取り組んでいく。・精緻なセンシング技術を用いて,外乱光などの変動に強い安定した画像取得(人のフレキシブルな視覚認識の代替)・AI技術を用いて,生産工程のさまざまな変動に中長期にわたり対応できる自動検査システム(人のフレキシブルな状況判断の代替,間接工数増加の抑制)3.3 タイヤ仕様の自動検査システムの開発(1)タイヤ仕様(刻印)の画像化 本取り組みでは,精緻なセンシング技術を用いた画像取得で「人のフレキシブルな視覚認識の代替」を目指す。 タイヤ側面に刻印されているメーカー,シリーズ,タイヤサイズ(Fig. 3)の画像化は,タイヤと判別対象の刻印が同じゴム素材である。そのため,黒背景に黒文字となり,一般的な照明とデジタルカメラでは,画像化の難易度が高く,また外乱光の影響を受けやすい。そこで,本取り組みではタイヤ仕様(刻印)の凹凸形状に着目した画像化処理方法(タイヤ側面の形状計測による画像化)を考案した。 この画像化処理方法は,タイヤを回転させながらレーザー変位計でタイヤ側面の形状を計測し,タイヤ全周の3次元形状データを,基準面に対する高さで256階調の濃淡データに変換し画像化する方法である。(基準面を128,基準面から-1.5mmを255,基準面から+1.5mmを0) この方法によって,外乱光などの設置環境の変動に依存せず,タイヤ仕様(刻印)を鮮明に画像化できた(Fig. 4,5)。 なお,出力スコアは,AIが自信をもって判別しているかの指標となり,出力スコアの差が僅かであれば曖昧な判別といえる。 また,CNN判別モデルは,仕様判別のためのルール(判別の特徴量,特徴量の演算式)の設計が不要で,検査対象画像を準備するだけで学習による判別モデルの構築が可能である。 そのため,従来の画像処理では必須であったルール設計のための間接工数を抑制することができる。※2 CNN判別モデル

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