マツダ技報 2021 No.38
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(3)仕様判別モデル構築の効率化 一般的なAIの使い方では,全ての事象を網羅した学習を行うアプローチで,膨大な学習データ(数千から数万)が必要であり,生産工程への適用は,膨大なデータ蓄積や学習の手間等の間接工数を考慮すると現実的ではない。 そこで,本取り組みでは,CNN判別モデルの効率的な構築(AI学習の効率化)を目指す。 本取り組みでは,以下➀~➃のとおり,予見される学習画像の変動を画像処理で再現し,あらかじめ学習データに織り込むことで,少ない基本学習データでも効率的なモデル構築を行った。➀基本学習データを準備:統計的な分布が確認可能な30枚のタイヤ仕様画像を準備➁タイヤ仕様画像の変動(明暗差)の影響因子を抽出:ここではタイヤ製品面のうねり,タイヤ回転軸角度のバラツキ等を含んだタイヤ横振れ量(タイヤとセンサー間の距離変動)が影響因子➂影響因子の物理現象を網羅する画像を準備:タイヤ横振れ量の寸法公差を網羅するように基本学習データ画像を10倍(10段階/枚)にデータ拡張(※3)(Fig. 7,8)➃生産工程の変動を織り込んだ判別モデルの構築:網羅的な学習データ(330枚)でモデル構築を効率化※3 データ拡張学習画像を反転や回転,輝度変化等の画像処理を用いて学習データを増やすこと(5)タイヤ仕様の自動検査方法 本取り組みの自動検査システム(Fig. 12)を生産工程に設置し,以下の方法でタイヤ仕様自動検査の精度検証を行った。➀対象車両の車幅・車高に合わせて計測器を移動―123―ycneuqerfycneuqerfycneuqerf Light -x.xx[mm]Base Images (30 data) Base Images +Data augmentation(30+300data)Fig. 7 Data AugmentationFig. 8 Data Augmentation Image(4)適切な閾値設定による不具合品の流出防止 本取り組みでは,生産工程のさまざまな変動に対応できる自動検査システム(人のフレキシブルな状況判断の代替)を目指しているが,「2.4 完成検査自動化の考え方」に従って,判別結果(出力スコア)が少しでも曖昧な場合は全て「不明」とする適切な閾値設定を行い,不具合品の流出防止を保証する。 生産工程で取得したタイヤ画像(約2000本分)の仕様判別結果を以下(Fig. 9~11)に示すが,出力スコアのLateral run-out Shade +x.xx[mm]Data augmentation [Light] Base Data augmentation [Shade] 100008000600040002000010000800060004000200001000080006000400020000105432105030score105432105030score105432105030scorePositiveNegative70909596979899PositiveNegative70909596979899PositiveNegative90959697989970Fig. 9 Result of Manufacturer DiscriminationFig. 10 Result of Series DiscriminationTable 1 Score Average and Standard DeviationManu-facturerSeriesSizeFig. 11 Result of Size DiscriminationPositive ScoreStandard deviationAvg.99.9980.0005399.9990.0038099.9920.22171Negative ScoreStandard deviationAvg.0.001120.000530.000040.001430.001960.10129平均,標準偏差(Table 1)から,AI判別の出力スコアが95点未満であれば「不明」と判定する閾値設定とした。なお,本取り組みのタイヤ仕様判別モデルは,正しい判別(Positive)と誤判別(Negative)の出力スコアが大きく乖離しており,高い精度で仕様判別ができているといえる。

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