マツダ技報 2021 No.38
135/197

―128― gnnarT・defect of weldsdoirep ii Fig. 1 KODO Design化について取り組んだ事例を紹介する。Fig. 2 Target of Takumi Development3.1 対象技能 金型製作部門では,数多くある金型製作の技能を体系化しており,その中で長い育成期間を要する技能を選定し技能伝承システムを開発している。これまで,金型仕上げ作業の基礎として重要なグラインダー研削技能において,育成期間の短期化を実現した(1)~(4)。本稿では,新たに「肉盛り溶接技能」を対象に取り組んだ事例を紹介する。肉盛り溶接技能は,グラインダー研削技能に次いで重要な基礎技能であり,金型にとって重要な意匠面の補修などに活用される。3.2 システム概要 本稿で紹介する技能伝承システムは,技能の定量的な計測・評価・訓練が可能である。システムの概要をFig. 3に示す。身体動作の計測は光学式モーションキャプチャーを採用し,4m×4m×2mの範囲において,8台のカメラで身体に取り付けた反射マーカーを計測し,三次元座標や速度などの情報を取得した。反射マーカーは技能者の身体に41個,ツールに3個取り付けた。更に,作業中の筋活動量は,モーションキャプチャーで計測した身体動作情報を基に,筋骨格モデリングシミュレーションを用いて推定した。これらの情報を分析することで,技能を見える化し,技能メカニズムを定量的に解明した。Fig. 3 System for Passing Down Skills and Techniques 4.1 技能階級の定義 現在,マツダの金型製作部門では,技能階級を5階級(匠級,上級,準上級,中級,初級)に区分し設定している。従来,初級から上級までは国家技能検定の取得や経験年数によって定めており,匠級技能者は20年以上の業務経験を持ち,海外での業務や指導・育成の経験がある「誰もが認める技能の優れた人」という周囲の官能評価を基に設定していた。技能伝承システムでは,これまでの官能評価ではなく,定量的な階級評価基準を新たに設定し,匠級技能者の基準を明確にした後,技能者の計測データを分析し,技能メカニズムを解明した。その評価に用いるテストピースの仕様をFig. 4に示す。評価は,球状黒鉛鋳鉄品(FCD600)の母材への多層盛りとし,実際の作業状態を考慮し母材を45°の傾きをもつ治具に設置した。溶接種類は金型製作部門で使用頻度の高いマグ溶接とし,溶接条件は固定とした。2. 技能伝承の目指す姿と課題3. 技能の見える化4. 技能のメカニズム解明on Digital Motion Analysis<Previous> 20years 15years Takumi Upper Pre-upper 10year7years Intermediate 3years Beginner <Target> Takumi Upper Pre-upper Intermediate Beginner 5year3year 1yearSkill training Analysis & Evaluation Skill medical record Measurement result Welding Movement analysis Measurement Skill movement Musculoskeletal excercise  マツダの金型製作部門の目指す姿は,技能を定量化し目標と課題を認知できる技能伝承と,自己成長を実感し自信と誇りをもって研鑽する働き甲斐のある職場づくりの実現である。目指す姿を実現するため,匠級技能者の育成期間の目標を従来の20年から5年とした(Fig. 2)。金型製作において「技能」は,「人の動き」となって表現される。そのため,身体の動きを分析することで,匠技に潜む勘・コツを解明できると考えた。よって,匠技を短期間で伝承するためには,「動きを全て見える化」し,「重要ポイントを特定」,それを「正しく伝え,習得する」ことが必要であると考え,以下3項目を重点課題とした。➀技能の見える化➁技能のメカニズム解明➂技能訓練の定量化

元のページ  ../index.html#135

このブックを見る