(1) 久保祐貴:「魂動デザイン」を支える技能者の育成,マツダ技報,No.36,pp.165-170(2019)(2) 久保祐貴:デジタル動作解析による匠開発システムの構築,型技術,7月号,pp.74-75(2020)(3) 佐伯千春:仕上げ技能における匠の動作および筋活動分析による技能伝承システム(TDSDMA)の開発と実用化,精密工学会誌,87巻,2号,pp.169-172(2021)(4) 久保祐貴:金型仕上げ技能における匠の動作及び筋―131― 4 Detect of welds View of [mm2]Defect of -5- 4 4 7. おわりにFig. 9 Virtual Welding TrainingFig. 10 Rank Change Before and After Instruction 初級から準上級へ昇格した事例をTable 4及びTable 5に示す。Table 4は溶接欠陥の写真と溶接欠陥の面積を示し,写真内の四角枠は溶接指示範囲を示す。Table 5には,訓練前後でのツール動作の標準偏差を示す。Table 5より,訓練後は特にツール移動速度とツール先端の母材WeldsBefore140.7Movement5.2 実機及びバーチャル訓練 技能カルテを基に訓練を行った。技能者は,技能カルテで技能向上課題を把握した後,ツール動作や筋骨格情報が匠級技能者の値に近づくように訓練した。訓練は2種類を実施した。1つ目は,実機を使った訓練である。金型製作の現場と同様の機器を使い,肉盛り溶接を行う。実機訓練では溶接の実現象と技能動作の感覚をすり合わせながら技能を向上できる。2つ目は,バーチャル機器を使った訓練である。バーチャル訓練は,拡張現実(Augmented Reality:AR)を活用した疑似訓練である。Fig. 9にバーチャル訓練の様子を示す。訓練では技能者が自身の動作をリアルタイムに確認し即時補正していくことが重要である。バーチャル訓練では,頭部に装着する機器の画面内で,自身のツール動作の情報を確認しながら訓練できる。そのため,技能者は自分の動作を即時確認し修正して技能を身に付けることができる。また,バーチャル機器は,ツール移動速度やツール角度など溶接で重要とする項目を基に,溶接動作を評価することができる。メカニズム解明で明らかにした重要管理項目と匠級技能者の値を基に,評価の閾値を独自に設定し,匠級技能者育成コースを作成し運用した。更に,バーチャル訓練では,溶接材やガスが不要であり,熱や光,煙,スパッタが発生しないため,従来の実機訓練よりも低コストでより安全性な環境下での技能育成が可能である。より効果的な育成を行うために,実機訓練とバーチャル訓練の長所を組み合わせた訓練を実施している。 Fig. 9 Virtual Welding Training 1 2 1 2 Intermediate 2 3 2 1 0 1 Takumi Upper Pre-upper 2 1 Beginner 0 0 1 3 2 4 Unit:Person 初級から準上級へ昇格した事例をTable 4及びTable 5に示す。Table 4は溶接欠陥の写真と溶接欠陥の面積を示し,写真内の四角枠は溶接指示範囲を示す。Table 5には,訓練前後でのツール動作の標準偏差を示す。Table 5より,訓練後は特にツール移動速度とツール先端の母材に対する変位の標準偏差が小さくなり,作業安定性が向上した。これらの各項目の改善により,溶接欠陥が減少し,溶接品質の向上につながった。また,従来の階級基準であれば10年掛かる準上級に,経験年数2年で到達できた。これにより,技能者が自己成長を実感し自信と誇りをもって研鑽する働き甲斐のある職場づくりを実現した。更に,短時間訓練での技能向上効果により対面での指導時間を削減でき,新型コロナウイルス禍での技能伝承の在り方を変え,働き方改革にもつながった。今後は,引き続き技能者の技能訓練を行っていく中で,より効果的かつ高効率に技能を向上させる指導方法を検討していく。 View of Defect of welds Table 5 Comparison of Before and After of Tool Tool MovementTool speed [mm/s]6.31Table 5 Comparison of Before and After Move angle [deg]0.40Tool angle [deg]Tool Movement Tool displacement [mm]Tool speed [mm/s] Move angle [deg] Tool angle [deg] 2 2 3 2 Fig. 10 Rank Change Before and After Instruction Table 4 Comparison of Before and After welds Detect of welds [mm2] Tool displacement [mm] Pre-upper Intermediate Beginner 1 0 0 1 of Defect of welds Before 140.7 of Tool Movement Before 6.31 0.40 0.87 1.92 2 1 0 3 2 4 Unit:Person After 49.5 Before0.81 After49.5After3.840.350.87After 1.923.84 0.35 0.22 0.220.81化を視覚的にとらえることができるため,技能者本人のモチベーション向上にもつながる。 6. 技能育成の効果6. 技能育成の効果 技能者1人につき,1回2H×4回の訓練を行い,訓練前後での技能階級の変化を確認した。8名訓練した結果として,訓練前後での階級分布の変化をFig. 10に示す。8名中5名の技能階級が昇格した。また,8名中7名は溶接欠陥が改善し,技能の向上を確認した。 を使った訓練である。バーチャル訓練は,拡張現実(Augmented Reality:AR)を活用した疑似訓練である。Fig. 9にバーチャル訓練の様子を示す。訓練では技能者が自身の動作をリアルタイムに確認し即時補正していくことが重要である。バーチャル訓練では,頭部に装着する機器の画面内で,自身のツール動作の情報を確認しながら訓練できる。そのため,技能者は自分の動作を即時確認し修正して技能を身に付けることができる。また,バーチャル機器は,ツール移動速度やツール角度など溶接で重要とする項目を基に,溶接動作を評価することができる。メカニズム解明で明らかにした重要管理項目と匠級技能者の値を基に,評価の閾値を独自に設定し,匠級技能者育成コースを作成し運用した。更に,バーチャル訓練では,溶接材やガスが不要であり,熱や光,煙,スパッタが発生しないため,従来の実機訓練よりも低コストでより安全性な環境下での技能育成が可能である。より効果的な育成を行うために,実機訓練とバーチャル訓練の長所を組み合わせた訓練を実施している。 技能者1人につき,1回2H×4回の訓練を行い,訓練前後での技能階級の変化を確認した。8名訓練した結果として,訓練前後での階級分布の変化をFig. 10に示す。8名中5名の技能階級が昇格した。また,8名中7名は溶接欠陥が改善し,技能の向上を確認した。参考文献に対する変位の標準偏差が小さくなり,作業安定性が向上した。これらの各項目の改善により,溶接欠陥が減少し,溶接品質の向上につながった。また,従来の階級基準であれば10年掛かる準上級に,経験年数2年で到達できた。これにより,技能者が自己成長を実感し自信と誇りをもって研鑽する働き甲斐のある職場づくりを実現した。更に,短時間訓練での技能向上効果により対面での指導時間を削減でき,新型コロナウイルス禍での技能伝承の在り方を変え,働き方改革にもつながった。今後は,引き続き技能者の技能訓練を行っていく中で,より効果的かつ高効率に技能を向上させる指導方法を検討していく。Table 4 Comparison of Before and After of Defect of 本取り組みによって,肉盛り溶接技能の匠級技能者を早期育成するシステムを開発した。今後も「魂動デザイン」の忠実な再現のため,金型製作におけるMass Craftsmanshipに取り組んでいく。そして,魂動デザインを通して,お客様の人生に輝きを提供するクルマづくりに取り組み続けていく。
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