マツダ技報 2021 No.38
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―137― Fig. 10 Di■erences in Corrosion Progression Evaluated (Time: 10-120s), Ecoat: G (Baking: 413K×900s-by Newly Developed Method Due to Changes in Coating Specifications, Steel: A, Zinc Phosphate: E 423K×1,200s, Thickness: 10μm).Fig. 11 Peeling State of Coating on Test Pieces after the Test Due to Changes in Coating Specifications, Steel: A, Zinc Phosphate: E (Time: 10-120s), Ecoat: G (Baking: 413K×900s-423K×1,200s, Thickness: 10μm).3.3 本技術の効果から考えられる技術適用先 本評価技術は,塗料や塗装前処理の研究開発,製造工場での品質管理から市場調査と幅広い領域で活用が可能である(Table 2参照)。例えば,研究開発では従来の錆の程度を確認する定性的な技術開発から,塗装部の防錆機能を定量的,かつ迅速に評価する技術開発にプロセス変革できることから,新塗装材料の設計やその機能発現メカニズムの解明,制御技術の飛躍を実現できる。次に,製造現場での日々の品質管理においては,従来は不可能であった防錆品質の日々管理が可能となり,より緻密に品質変動を制御・最小化できる。専門性が不要で一般作業従事者も評価可能である。また,本技術は塗装鋼板を主として使用する自動車業界以外の運輸,電気,家電,建設,プラント,土木,住宅等の全産業界での応用が期待できる。ただし,室外での塗膜の劣化調査などへの展開を考慮すると,試験環境温度の管理方法など改善が必要な項目がある。 次に,具体例として溶接部周辺の耐食性改善を目指した塗料や塗装前処理の研究開発に本技術を活用した事例を示す(Fig. 12参照)。溶接ビード周辺の酸化皮膜の除去や塗料の改良によって,実腐食試験において錆の程度が抑制されていることが分かる。本技術を用いて評価を行うと,目視の定性的な評価ではなく,腐食抑制期間は一般塗料(タイプH)と比較して改良塗料(タイプIやJ)では約2~3倍,腐食進展速度は酸化皮膜の除去を行ったタイプCやDでは,未除去のものと比較して1/2~1/8倍であることが定量的に確認できた。Table2 Scope of Utilization of a New Accelerated Evaluation Method for Corrosion ResistanceFig. 12 Examples of Technology Utilization for Research and Development of New Rust Preventive Technologies Such as Paints and Pre-treatment of Paintingめられた。化成処理の条件については,同様の電着塗装条件であれば,先に確認したのと同様に処理時間が長い試験片ほど腐食進展速度は遅くなった。このことは,電着塗膜の架橋密度が低いほど塗膜が保水し易く,塗膜下に水やイオン物質,溶存酸素が供給され易いこと,化成処理時間が短いものほど被覆率が悪化して塗膜下で腐食電流が流れ易いことに起因すると考えられる。実腐食試験に基づき評価した腐食進展速度と本技術により評価した腐食進展速度との間にはR2=0.98と高い相間が認められた。本技術の腐食の加速性は,従来の実腐食試験と比較して約800倍であり,極めて迅速に評価を行うことができる。代表的な試験片の試験後のカソード部を観察した(Fig. 11参照)。この写真は塗膜膨れをテープ剥離した後のものである。今回の塗装条件の範囲において,化成処理の時間が長く,更に電着塗料の加熱温度が高く,加熱時間も長い右下の試験片ほど,試験後の塗膜剥離面積(径)が小さく,腐食進展速度が遅いことがわかる。以上のことから,本評価法により腐食進展速度を定量的に短時間で評価できることが分かった。

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