マツダ技報 2021 No.38
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(2)部品モデル 対象とする補強部材を梁要素でモデル化し(Fig. 4),車体フロアのトンネル部に取り付けた。部品構造の制御―145―Fig. 1 Overview of the ModelFig. 2 Material ModelFig. 3 Hysteresis Curvesが必要になる。 一方,大幅な軽量化を実現するため車体のマルチマテリアル化の検討が進められており,軽量高性能材料として,繊維強化樹脂が注目されている。さまざまな材料や,材料内部の性能を質量効率よく利用するためには,材料と構造を同時に開発し,それぞれの性能を最大限に発揮させることが必須である。しかし,現状は,材料と構造の個々のモデルは存在しているが,それぞれのモデルをつなぐ方法論は確立されていない。そこで,メカニズムに基づき機能をモデル化することで,多性能・高機能を実現する考えを基に,モデルの検討を進めた。具体的には,CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastic) のもつ異方性の活用による,車体の剛性と減衰性の向上を題材として,材料と車体性能をつなぐモデルの技術開発を行った(1)。2. 材料と車体性能をつなぐモデルの構築2.1 異なるスケールのモデルをつなぐ方法 材料と構造を同時に開発するためには,材料特性が車体性能に与える影響を予測する順解析と,車体性能目標から目標を満足するために必要な,構造や材料の要件を算出する逆解析ができる状態にすることが課題である。 この解決のアプローチとして,順解析は,各スケールのモデルにおけるインプットとアウトプットをメカニズムに基づいて整理し,モデル間でつなぎ合わせることで対応する。また,逆解析のためには,スケール間を跨ぐ大規模な数値探索が必要となるため,各スケールのシミュレーションモデルを,計算コストが極めて小さなサロゲートモデルに置き換えることで対応する。このサロゲートモデルの構築には機械学習を活用する。具体的には,少ないデータでサロゲートモデルの精度を確保するため,実験計画法に基づいた各スケールのシミュレーションでデータ群を取得し,それを学習データとして応答局面モデルを構築した。今回は,ESTECO社製modeFRONTIERで実装されている応答曲面法を用いた。 以上により,材料,部品,車体構造の各スケールのインプット(制御因子)とアウトプット(目的関数)の関係を解くモデルを開発した。モデルの全体像をFig. 1 に示す。2.2 各スケールのモデル(1)材料モデル 産学連携プロジェクトで開発されたマルチスケールシミュレーションプラットフォームOCTAに含まれる粗視化分子動力学シミュレーターCOGNACを用いて,炭素繊維とエポキシ樹脂のモデル化を行った(Fig. 2)。モデルで扱う制御因子は,樹脂の剛性,繊維の剛性,樹脂同士の相互作用,繊維同士の相互作用,繊維と樹脂の相互作用の5因子とした。樹脂同士の相互作用は,樹脂の分子鎖の絡み合い度合い,繊維同士の相互作用は繊維の分散度合い,繊維と樹脂の相互作用は繊維と樹脂の密着度合いと解釈し解析を実施した。モデルの振動解析により得られるヒステリシス曲線(Fig. 3)から,繊維方向と,繊維直交方向の弾性率と,損失係数を算出した。

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