マツダ技報 2021 No.38
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(1) ζtotalはモード減衰比,ηtotalは損失係数,Utotalは車体のひずみエネルギー,Uemは部品のひずみエネルギー,ηmは部品を構成する減衰材料の損失係数である。3. モデルを用いた解析の実施1212(3)車体モデル シェル要素で構成された車体構造(Fig. 5)に対し,NASTRANを用いた静解析,及び,固有値解析を実施した。―146―emax=1emmmUeUmaxFig. 4 Parts ModelFig. 5 Car body Model3.1 最適解の探索 順解析を行った結果をFig. 8 に示す。材料と構造の特性の制御により車体性能がどのように変化するかの解析結果が得られることを確認している。また,応答曲面を用いた多目的最適化(逆解析)計算を行うことで,設定Fig. 8 Analysis Results of Car Body Performance3.2 データマイニングによる設計指針の導出 車体ねじり剛性と,フロア振動モードのモード減衰比を向上させる汎用的な設計指針を得るために,最適化計算で得られた多量のデザイン群に対して主成分分析を行った。今回対象としている車体ねじり剛性と,フロア振動モードのモード減衰比を,目的関数として赤色の矢印で示している。材料の制御因子は①樹脂の剛性,②繊維の剛性,③樹脂同士の相互作用,④繊維同士の相互作用,⑤繊維と樹脂の相互作用としている。構造の制御因子は,⑥断面高さ,⑦断面幅,⑧高さ方向の板厚,⑨幅方向の板厚としており,材料と構造の各制御因子は青色の矢印で示している。 赤色の矢印のベクトルに対し,青色の矢印のベクトルの内積の大きい因子ほど,目的関数である車体性能への寄与が高くなることを示している。また,矢印の方向にFig. 6 Car Body Torsion ModeFig. 7 Car Body Floor Vibration Mode =ζ=∑.mm∑totalηtotaltotalηm=1因子として,梁部分の断面高さ,断面幅,高さ方向の板厚,幅方向の板厚とした。材料物性の制御因子として縦弾性率,横弾性率,繊維方向の損失係数,繊維直交方向の損失係数とし,構造と材料の各因子の数値を制御することにより部品の機能検討を行った。なお,繊維配向は,CFRPの異方性の特性を最大限に利用できる,梁要素長手方向への一方向性材とした。 対象とする性能は,車体ねじり変形時(Fig. 6)の剛性(以下,車体ねじり剛性)と,フロア振動モード(Fig. 7)でのモード減衰比の変化で評価した。フロア振動モードのモード減衰比は,車体の総ひずみエネルギーと,部品のひずみエネルギーから算出されるエネルギー分担率と,部品の損失係数を用いて,式(1)によりモード減衰比を算出した。した設計空間での車体ねじり剛性と,フロア振動モードのモード減衰比の最適解の集合を示すパレート解を算出することが可能である。多目的最適化においては,これらパレート解の中から,目的にあった解を選択することで,最適解を得ることが可能となる。

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