マツダ技報 2021 No.38
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(3)車体性能向上指針の妥当性検証 構築したモデルによって導出した,材料と構造の制御指針に沿って,材料は,樹脂内の相互作用を向上させた改良樹脂を適用した。また,車体剛性向上への寄与度が高い,繊維の剛性を向上させた。構造は,部品断面高さの確保を行いつつ,ねじり剛性の制御を行った。これら性能向上指針を織り込んだCFRP部品を作成し,効果検証を行った。 Fig. 15 に試験方法を示す。車体の固定は,ラバーマウントを介して実施した。フロントフレームを加振し,車体に取り付けた加速度ピックアップセンサーにより振動特性を評価した。なお,車体のねじり剛性評価は,加振試験で代用している。車体ねじり剛性が向上すれば,加振試験によって得られる車体ねじりモードの共振周波数が向上することから代用指標として使用した。減衰性能は,試験によって得られる周波数応答関数から,半値幅法によりフロア振動モードのモード減衰比を算出した。(2)フロア振動モードのモード減衰比向上因子の制御指針 フロア振動モードでは,Fig. 7 に示すようにフロア振動による部品取り付け面の面角度の変化に対し,斜めに横断するように部品構造を配置していることから,部品がねじりモードで変形していると考えられる(Fig. 14)。また,先行研究では,繊維強化樹脂の積層円筒で繊維配向角とねじり方向の減衰性との関係を評価した結果,ねじり軸に対し,0°もしくは90°の一方向性材にすることで,ねじりの減衰性能を最大化できることが分かっている(2)。よって,部品のねじり剛性の制御により,ねじりモードの変形を許容することで,一方向性CFRPのねじりの減衰性能を利用することを示唆していると考えられる。―148―5. おわりにFig. 13 Deformation Behavior of Car Body Torsion ModeFig. 14 Car Body Deformation Behavior and Bar Element Behavior in Floor Vibration ModeFig. 15 Vibration Test by Car BodyFig. 16 Vibration Test by Car Body 汎用エポキシ樹脂に対し,改良樹脂は減衰性能を約50%向上させることが可能であることから,解析で得られた因子の制御指針の有効性を確認することができた。4.2 構造因子の制御指針の妥当性検証(1)車体ねじり剛性向上因子の制御指針 逆解析の結果,部品断面の高さ方向を向上させ,幅方向を減少させるように制御することで,車体性能を向上することができると示唆している。これは,車体ねじりモードに対し,今回対象とする部品が上下曲げモードのみで車体変形を抑制するためであると考えられる(Fig. 13)。部品の曲げ剛性を向上するためには,材料因子である弾性率の向上と,形状因子である断面二次モーメントの向上が必要となる。部品断面高さに関する因子は断面二次モーメント向上に有効であることから,車体性能向上に寄与する因子として抽出されたと考えられる。 実験結果をFig. 16 に示す。逆解析で得られた構造の制御指針と,材料の制御指針を織り込むことで,部品の質量効率として,車体ねじり剛性を約25%向上でき,フロア振動モードのモード減衰比を約13%向上可能であることが確認できた。 材料,部品,車体構造の各スケールのインプット(制御因子)とアウトプット(目的関数)を応答曲面法で構

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