マツダ技報 2021 No.38
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―154―]-[ ECFig. 5 Comparison of Prediction for Down Sampling  ダウンサンプリングの方法としてはデシメーション(間引き)を実行する。目的変数(CE)を表すyに関するダウンサンプリング前の信号をy [t],後の信号をy [M・t]とする。Mはダウンサンプリング比と呼ぶ。y [t]の実際のデータyi (i = 1, 2, …, n)は各時刻t = i࢞t(࢞tは時間刻み幅[sec]を表し,本検討では ࢞t = 0.01である)における値をもち,ダウンサンプリングにより得られるy [M・t]の実際のデータyi,(i′=1, 2, …, n′)は各時刻t=i′M࢞t(M࢞tが時間刻み幅[sec])における値をもつことになる。信号を間引くことで時系列データのもつ周波数スペクトル成分が変化する。つまり一部の信号列がゼロ値に置き換わり,従来は生じていないデータ上にもノFig. 6 Comparison of Prediction for Some Lag Values 同図ではLag=0,2,10を比較して縦軸の左側がCE,右側が車速を示している。CE計算値(青)はAFS取得の流量瞬間値とCAEで計算したCEから推測した値でありこれを真値とした。 ECUによる出力値であるCE(橙)と比較すると,GPで推定したCEに比べて若干の時間遅れが生じている。GPによる推定値と各Lagを比較すると横軸の時刻20 [sec] 以上から50 [sec] までは,どのLagにおいてもCE値が推定値とほぼ一致していた。ただし比較的急峻な加速シーンにおいて,Lagの値を10で推定させると再現性が低いことがわかった。一方でLagを0とした場合では,走行開始してから若干の上限振動はあるがほぼ追随して真値に近い推定値を保っていた。3.5 統計モデルの活用法に関する考察 以上の結果から下記のことが考察できる。 走行パターンを考慮して内燃機関を併用させる車両の場合Lagが大きい場合にはCE値の推定精度が低くなるため,急峻な加速シーンにおいてはIGON(エンジン始動)と連携させて考える必要がある。例えば制御のONが入った後,50ms (0.05sec)~1sec以降にランプ(始動までの勾配部分のこと)なしで推定開始するのではなく,計算のための予備の時間としてランプ期間を設けるのが効率的と考える。 また,燃料の濃度の配慮も必要であると考える。例えwith Lag=2Time [sec] 上記の結果から特に(c)のケースにおいて,全ての検証データでR2が高く確保され統計モデルの説明変数の選択として妥当と判断した。また,GPでは多くの説明変数を与えると逆に推定精度が低下することを把握した。 (a)や(b)での推定精度が低い理由として,(a)のケースでは過度に多くの変数を含むため,逆行列計算に特異な影響が出てしまい推定精度が低下したことが考えられる。(b)については(c)の変数に追加して温度の変数を更に加えることで計算したが(c)の変数の中で温度との相関関係が生じたことによる影響で,(b)のケースでは多重共線性が排除できなくなったと考える。3.3 遅れ要素を考慮したフィルター処理の検討 一般的に内燃機関における制御は,エアフロセンサー(AFS)をエンジンの吸気系上流に配置することで気筒に充填される大まかな空気量を計測できる。ただ,気筒内内部や近傍にセンサーを配置できないことを先に述べた。そのため,これまでの経験からCEを正確に把握するにはAFSから気筒までの吸気経路分の遅れ要素を考慮するとよいとされてきた。 そのため本節では,遅れ要素を表現できるLPF(ローパスフィルター)やダウンサンプリングを検討した。なかでもダウンサンプリングはLPFのような特性をもつことが知られている。 Fig. 5ではLag2の場合のCEの推定値を示した。イズが生じることがある。Mが低下すると,隣に接するスペクトル同士が近づく。Mが大きくなるとエイリアシングが起きる傾向もみられる(7)。そのためダウンサンプリング比を選択して用いることは,真値に対する推定において効果的と考えられる。Fig. 6では,M=40(すなわち,M࢞t=0.4 [sec] 刻み)に設定すると推定精度が低下した。この要因は隣接する元のデータ同士が相互に影響したためと考えられる。説明変数と目的変数それぞれでスペクトルの変化が伴い推定精度に影響が出るため,適切なMの値を選ぶ必要がある。今回はLag=2のみの結果であるので,次節ではLagの条件を変えて検討を行うこととした。3.4 Lagの変化に伴う統計モデルの推定精度 本節ではCEの推定をTable 1のエンジン諸元及びTable 2の計算条件の下で,Lag違いの解析を行った。結果をFig. 6へ示す。

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