マツダ技報 2021 No.38
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(1) つぎに,振動減衰評価に用いた試験片外形と,粒子の充てん方法をFig. 3に示す。試験片は,AC4D製の短冊形状をした試験片で内部に粒子を充てんするための容器を設け,上蓋とボルト締結にて密閉する構造となる。d ―163―η=]Bd[V/F I ecnadepmmp N μ V d M f2f0 f1 Fig. 2 Experimental Equipment Outline and Damping −f2f0Fig. 3 Schematic Diagram of Granular DamperFactor Calculationf1(a)Internal forcesof impact(b)Internal forcesof frictionalf (x) Fig. 1 Schematic Diagram of Granular Damper2.2 評価装置・実験条件 振動減衰性能のモデル化には,可動する粒子の挙動についてシミュレーションを行い,上述したふたつの制振作用それぞれを算出して振動応答を定式化することが必要となる。モデル化に先だち,充てんする粒子の特性やV’ Displacement sensor Amplifier Granular damper Shaker Input module Granular:Aluminum SEM image 200mm 10mm 20mm 3dB Frequency [Hz] る抵抗力によって振動エネルギーを低減する,振動減衰に着目して研究開発をしている。これまでに,構造間の摩擦振動によって生じるせん断作用を応用した摩擦減衰の数理モデル化及び自動車部品への設計適用手法を構築してきた(2)(3)。本稿ではこれら技術を応用して,高温かつ高荷重な環境でも対応可能な制振手段となりうる“粒状体ダンパ”に着目し,その適用効果と制振メカニズムについての開発事例について報告する。2. 粒状体ダンパの動作原理と評価手法の構築2.1 粒状体ダンパの構成と動作原理 粒状体ダンパは,制振対象に空隙を含む空間を形成して内部に多数の粒子を充てんすることで制振を行う,振動減衰要素の一種である(Fig. 1)。充てんする粒子は,金属あるいは無機系材料を用いることが多く,一般的に熱時強度をもつ材料となるため,エンジンなどの構造物への適用も期待できる(4)。構造のシンプルさや広帯域での振動減衰効果を得られる利点がある一方で,可動粒子を封入するためその振動特性を予測することが難しい一面もある(5)。振動減衰する原理は大別して2種類あり,ひとつは自由運動を行う粒子が容器壁面へと衝突することで生じる反力を利用した制振作用(a)と,粒子同士の振動によって生じる摩擦エネルギーを熱へと変換する制振作用(b)である。(a)では制振対象に総質量mpに相当する粒子を容器との隙間dの間隔で封入したとき,振動入力f (x)に対して粒子と制振対象との間に生じる位相遅れによって反力を生じさせることで振動変位を抑える。これを粒子ごとに微視的に示すと(b)のようになる。個々の粒子は,速度V,V′ で粒子同士が衝突する際の摩擦力(μN)によって振動を熱へと変換して減衰をしている。以上の作動原理を踏まえ,部品スケールでの振動に対してミクロな粒子間摩擦も考慮して性能予測に反映できる,モデルの構築を行った。充てん量など各因子に対する制振効果を定量的に検証可能な評価装置を構築した。 Fig. 2は,評価装置の構成と,振動減衰性能の算出方法について図示している。装置は,加振器,計測対象となる試験片の加速度と荷重とを計測するインピーダンスヘッドと,試験片を支持するコンタクトチップから構成される(使用装置:Brüel & Kjær 製,PULSE 8400)。上記の装置構成は,一般的な減衰評価装置と同等となるが,粒状体ダンパでは,加振する振幅量もモデル化に重要な因子となる。そのため,試験片の振れ量を計測可能なレーザー変位計を設置して試験片端部の振幅量も同時計測する装置構成とした。 振動の減衰性能は,対象物を振動励起した際の荷重の周波数特性から,反共振周波数での応答を基に算出を行う(6)。振動の減衰性能を表す損失係数 η は,反共振時のピーク周波数f0から3dB減じたときの両端の周波数差f2-f1を用いて式(1)のように表すことができる。 粒子充てん時の隙間量を表す空隙率 ε は,構造内部の空間体積をVT,粒子封入後の隙間体積をv′ としたとき,両者の比として式(2)にて表すことができ,充てん粒子

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