マツダ技報 2021 No.38
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(2) 試験には,耐熱性及びエンジン部品への充てんを考慮して質量増加を最小化しうるアルミニウム粒子を用いた。粒子は,基本粒径31.79 μm,71.78 μmの2種類をガスアトマイズ法によって製作したものを用いた。2.3 評価結果・考察 Fig. 4は,試験片をランダム加振したときの応答荷重Fについて,応答速度Vの比で周波数分析した結果となる。グラフは,横軸周波数に対する機械インピーダンス(F/V)を表し,荷重入力に対する構造体の応答特性を示している。図中の実線は,アルミニウム粒子(基本粒径:71.78 μm)充てん時の結果となり,破線は容器内に粒子を充てんせず,単体にて加振した結果となる。アルミニウム粒子の充てん量は,容器空間におけるおよそ半分を空隙が占める分量(空隙率45.6%)を充てんし,振幅量1.38 μm,7.82 μmの2水準で加振した。―164―εν=′=−1VT]Bd[VFecnadepm]Bd[VFecnadepm]-[η rotcaf gnpmaD 0/I0i /I00Fig. 4 Frequency Response of the Granular Damper 粒子充てんのない単体加振時の荷重応答特性は,周波数800,1366,2276,3400Hzにて反共振点をもち,振幅量を変えてもピーク周波数や荷重に変化なく一定の値を示すことを確認している。この結果は,一般的なアルミニウム平板と同様の傾向であり,本試験で用いた試験片は,振幅量に依存した特異な特性変化がほぼない。一方で,粒子を充てんした際の荷重応答特性は,振幅量の増加に伴って荷重応答が小さくなることから,より振動の減衰効果が顕著に現れる。 上記結果の詳細分析をするため,試験片容器単体並びに粒子充てん状態での振幅量と,損失係数の変化をプロットした結果をFig. 5に示す。グラフは横軸を振幅量,縦軸を損失係数として,1次並びに3次反共振点での損失係数をプロットしている。損失係数は,容器単体では振幅量,次数によらず一定値を示すが,粒子を充てんすることで振幅量と次数に依存しておおむね増加傾向を示す。Fig. 5 Damping Factor for Vibration Displacement with Fig. 6 Frequency Response of Granular Damper for and without ParticlesEach Particle Sizemp⋅ρpVT100Vibrational displacement757.82m502510001.38mBlank container20003000Frequency [Hz]0.40.30.20.10.0400080604020Porosity 45.6%3rd Ord1st Ord0.05.010.0Granular Diameter71.78m31.79m10002000Frequency [Hz]Blank3rd Ord1st Ord15.0Vibration displacement [m]20.030004000の総質量mpと密度 ρpから算出することができる。 損失係数が振幅量に依存する要因は,容器内部に充てんした粒子の運動量増加に伴って衝撃力の増加が寄与したものと推測する。同様に,共振次数が高次になるほど容器のモード変形量が増えることで充てん粒子の摩擦力も増加しているものと推測している。上記現象の詳細は,粒子と試験片との衝突反力の増加が減衰性能に影響しているため,3章の予測モデルを用いて詳細分析を行う。 つぎに,充てんするアルミニウム粒子の基本粒径を71.78 μmから31.79 μmへと小粒径化したときの周波数応答をFig. 6に示す。グラフは,実線が基本粒径71.78 μmの粒子を封入したもので,破線が粒径31.79 μmの粒子を充てんしたときの結果となる。このときの評価条件は,粒子充てん量22.8g(空隙率65.1%),振幅量6.2 μmに統一して比較を行っている。それぞれの周波数応答は,比較的類似した傾向を示すが,1次反共振周波数(1~1.2kHz)において,小さい粒径31.79 μmのほうがわずかに低い周波数に反共振点をもつ。これは,充てんする粒子質量が同一であっても小さい粒径サイズのほうが,容器内壁と粒子との接触面積が多くなり,見かけの質量が増加したものと推測する。結果,容器内にて可動できる粒子質量が減少することで,減衰性能にも差異が生じてくる。したがって,振動による衝撃反力を効率よく得るためには,自由運動する粒子質量を最大限確保することが減衰性能向上に重要となることを示唆している。

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