マツダ技報 2021 No.38
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―165―]-[η rotcaf gnpmaD 40Porosity [%] i0i0]-[η rotcaf gnpmaD3. 粒状体ダンパの減衰性能予測手法の構築 粒状体ダンパの振動減衰性能は,一般的な金属材料と比較して高い減衰効果を発現する一方で,充てんする粒子の仕様や振幅量,振動次数によって効果に差が生じることが実験から導出された。本章では,充てんする粒子の特性変化に対する減衰性能の予測手法と内部挙動変化について述べる。 本研究では,粒状体ダンパの加振状態を模擬するため,Fig. 7 Comparison of Damping Factor for Amplitude Change at the Third-order Anti-resonance Point in Aluminum with a Particle Size of 31.79μmFig. 8 Comparison of Damping Factor for Amplitude Change at the Third-order Anti-resonance Point in Aluminum with a Particle Size of 71.78μmAmplitude[m]1.384.600.40.30.20.10.020Amplitude[m]1.384.600.40.30.20.10.0207.829.4380607.829.434060Porosity [%]80100100Spring Fig. 9 Granular Damper Calculation ModelGranular Container Granular  また,それぞれの粒子径,空隙率,振幅ごとの損失係数をまとめた結果をFig. 7,8に示す。Fig. 7は,基本粒径31.79 μm,Fig. 8は71.78 μmにおける比較結果となり,3次の反共振点での損失係数を比較している。損失係数はいずれの粒子径においても,大きな振幅量となるほど高い減衰性能を示す傾向となり,空隙率に対して極大となる充てん量が存在する。粒径31.79 μmの粒子充てん時には,比較的高充てんな40%前後,粒径71.78 μmのときは75%にて極大値をもつ。 上記の結果は,基本粒径のサイズ差によって摩擦力に差異が生じることで,極値も変化するものと推測している。そのためより効率的に減衰効果を得るには,制振対象となる部品の大きさに適合した,粒径と空隙率を選定する必要がある。加振点とばねで接合した容器の中に任意の粒状体を充てんして減衰性能予測を可能にする,粒状体ダンパモデルを構築した(Fig. 9)。このモデルは,計算コストの制約を考慮し,容器は一辺1mmの立方体構造に縮約している。また,充填した粒子との衝突力を反映するため,容器と同等の機械特性をもつ粒子を外壁部に配置している。減衰性能の予測は,容器の振動解析から行っている。 粒子の挙動計算には,解析対象内を自由運動する要素のモデル化並びに要素間の接触や摩擦を考慮して逐次計算可能な,離散要素法(Discrete Element Method,以下DEM)を用いた(7)。DEMの計算ソフトは,分子動力学法の計算で使われるサンディア国立研究所のLAMMPS(Large-scale Atomic Molecular Massively Parallel Simulator)を用いている。計算には,DEM用ソルバーであるGranular modelsを使用することで,Hertzの接触理論をベースに材料の機械的特性を考慮した。3.1 計算パラメータの同定 Granular models を用いて実態に則した粒子の挙動計算を行うには,比重や剛性などの機械特性にくわえて,粒子表面の摩擦係数を定義する必要がある。粒子の摩擦係数は,形状に起因して変化するため安息角を実測して同等となる摩擦係数をモデルに反映した。安息角は,一定の高さから粒子を落下させて自発的に崩れることなく安定的に形成する山の斜面と,水平面とのなす角度を表し,粒状体の流れやすさの指標化に用いられる。安息角が大きい粒子は,高い摩擦係数となって振動入力に対し可動している時間が短くなる。粒状体ダンパの性能予測には重要な制御因子となるため,試験と同様の安息角となる静止摩擦係数をシミュレーションより求めて数値化した。 Fig. 10は,粒径71.78 μmのアルミニウム粒子の安息角を,Fig. 11は粒径125 μmのジルコニア粒子の安息角を比較した結果となる。それぞれ,(a)実験及び(b)DEM計算による比較結果となり,測定結果も併記している。比較に用いた粒子種において実験と計算値との誤差は1%以内となることから,安息角を精度よく再現できており,同定した静止摩擦係数は実測に近い値を得ることができたと考えられる。

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