(3)Sustainable Material (素材) 「ヘリテージコルク」と呼ぶ自動車としては新しいコルク素材を,コンソールトレイとドアグリップ部に採用した。コルクは環境負荷の少ない素材である上に,温もり感のある見た目・手触りは乗る人に安心感を与え,そのクッション性は機能性にも優れている。コルクならではの素材本来の特徴を活かす専用コーティング,コルク材と樹脂を同時に成型する手法を開発したことにより,コルクらしい風合いを最大限に表現しつつ自動車部品としての高い耐久性を両立した。従来の内装素材と同等の性能を確保している。「ヘリテージ」の由来は,マツダの歴史が,1920年に「東洋コルク工業(株)」として設立したことから来ている(Fig. 2)。―11―Fig. 2 Heritage CorkCoating Cork Resin/cork;integral molding Resin parts その他にも,ペットボトルのリサイクル原料から作られた繊維素材をドアトリムアッパー部に,リサイクル糸を使用したファブリックを一部シートに採用しており,環境負荷の少ないサステイナブルな素材を用いて,心地よい空間を構成している。 プレミアムヴィンテージレザレット(人工皮革)を開発し,人工皮革という技術だからこそできる触感と表情の表現の可能性にチャレンジした。高品質な人工皮革をベースに,豊かな表情を見せるヴィンテージレザー柄をプリントし,皮膜の厚さを緻密にコントロールしたシリコンコートを施すことで,奥行き感のある表情と心地よい手触りを実現した。またこの人工皮革は生産プロセスの中で有機溶剤を使用しないため,環境負荷の低減にも貢献している。(4)タッチパネルディスプレー(機能) MX30はフローティングコンソール前部に,7インチのタッチパネルディスプレーを採用した。このディスプレーは,インタラクション機能と,直観的なタッチ操作が可能なエアコン機能の2つの役割をもつ。インタラクション機能は,「心」の領域に踏み込んだマツダのチャレンジである。クルマに乗り込むたびに少しずつ違うグラフィックがドライバーを迎え,人とクルマとの心理的距離を近づける体験を提供する。(5)エレキシフト(機能) 安全性を最優先させるマツダの思想に基づき,確実な操作をサポートする新しいシフトパターンを開発した。エレキシフトのシフトレバーはスイッチ式やダイヤル式などさまざまな方式があるが,マツダでは従来のATシフターと同様,各シフトポジションに応じてレバー位置が固定されるステーショナリー式を採用した。操作時の手応えと,瞬間的な視認でも現在のシフト位置がわかり,車両の状態を把握しやすいことを大切にした。 また,エレキシフトはシフトレバーとトランスミッションをつなぐケーブル類が不要となるため,フローティングコンソールの構造実現に大きく貢献した。3.3 KV#3 ドライビング体験 「どんなシーンであっても,純粋に運転を楽しんでもらいたい」,そのマツダの想いは,パワートレインの種類を選ぶことなく,その車のもつ特徴を活かして,マツダで理想とする走る歓びを目指している。 MHEVでは,人間特性に基づいた造り込みによって,従来モデルと同等の出足の良さや加速感を実現,手足のように動かせる車,人の運転操作原理と車の反応・挙動が一致することを目指し,街乗りから高速道路まで軽快で安心感のある走りを提供している。 BEVには,電動化技術「e-SKYACTIV」を導入した。人間特性に基づいた造り込みによって,マツダならではの思いのままに操れる走行性能とシームレスで滑らかな挙動を高次元に融合させ,SKYACTIVVEHICLE ARCHITECTUREやGベクタリングコントロール(GVC)などの進化と合わせて,マツダの走行性能を更に深化させた。(1)電動化技術e-SKYACTIV 電動化技術での人馬一体の実現を目指し,「e-SKYACTIV」開発を進めてきた。e-SKYACTIVは,リチウムイオンバッテリーとモーターのシステムを基本とした,電力のみでの走行が可能なEVを実現する新開発の電動化技術である。そこに,マツダならではの人間中心の思想に基づいた技術を融合させることで,ドライバーの思いのままにクルマを操れるドライビングフィールを実現した。(2)SKYACTIVVEHICLE ARCHITECTURE 車両構造技術SKYACTIVVEHICLE ARCHITECTUREを,MX30でも取り入れている。SKYACTIVVEHICLE ARCHITECTUREとは,自らの足で走っているかのような自然な感覚を実現し,乗る人全てが心地よさを感じられる走行性能や,無意識に体のバランスを取り,頭の揺れを抑えるという人間のバランス保持能力を,クルマに乗っているときでも発揮できることを目指して,生み出した車両構造技術である。その上で,EVの特長を活かす最適な造り込みを施すことで,人間の感覚にフィットした乗り心地と操縦安定性を実現した。 MX30 BEVでは,バッテリーパックを挟み込むように上下にストレートなクロスメンバーを配置するなど,バッテリーパックも環状構造の一部として活用し,路面入力のフロントからリアへの伝達遅れの低減に貢献している。
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