マツダ技報 2021 No.38
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 Fig. 4においてGVC req.が減速側の絶対値が大きく,加速側の絶対値が小さいのは,式(1) のGVC制御則におけるCxydとCxyaに異なる値を設定しているためである。路面や風圧等さまざまな要因で自然に発生する減速とは異なり,アクセルペダルの操作を伴わない加速はドライバーにとって違和感となるため,ドライバーの切り込み操舵における制御ゲインCxydに対し,切り戻し操舵の制御ゲインCxyaは1⁄10程度とした。このように切り戻し操舵時の加速は僅かであるが,フィーリングに及ぼす影響は大きく,後述するようにドライバーの視線や操舵を安定させる。2.3 前後・横加速度及びロール・ピッチの連係 ここではe-GVC Plusの中で,式(1) を制御則とするGVCについて,車両の運動へ及ぼす効果を示す。自動操舵装置を用いたオープンループ試験で,GVC有無の2仕様において試験を実施した。試験モードは,車速50[km/h]以上まで加速した後にアクセルオフし,車速が50[km/h]になった瞬間にFig. 5の操舵角を自動操舵装置で与える走行モードとした。ヨーレイトについてはGVCの有無で差がなく,操舵に対して同じように応答している。このような穏やかな操舵の走行では,Fig. 1における➁の直接ヨーモーメント制御は作動せず,Fig. 1における➀➂の加減速制御のみ作動する。 直進から操舵角を切り込むターンイン,操舵角一定の旋回,そして直進状態に操舵角を切り戻すターンアウトを通じた走行モードで計測実験を行った。 GVCなしの“g-g”ダイヤグラムをFig. 7に,GVCありの“g-g”ダイヤグラムをFig. 8に示す。Fig. 7の制御なしでは,前後加速度の変化が小さく,前後加速度と横加速度が不連続に折り返している。一方で,Fig. 8では加速度が滑らかにつながっている。また,ターンアウト時 (Fig. 6では3秒から4秒の間) に,ごく僅かであるが加速している。ターンインからターンアウトまで前後加速度と横加速度が滑らかにつながる。―15―Fig. 4 Time Histories of Control Signals during Lane ChangeFig. 5 Steering Wheel Angle and Yaw RateFig. 6 Longitudinal and Lateral Acceleration 計測した前後加速度と横加速度をFig. 6に示す。前後加速度は,Fig. 1で示した制御コンセプトと対応して,GVCによって切り込み操舵時に減速し,切り戻し時に遅滞なく僅かに加速した。一方で,横加速度は,GVCの有無でほとんど差がなかった。

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