マツダ技報 2021 No.38
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 Fig. 19で示した時系列の操舵角データについて,ドライバー負担を評価するステアリングエントロピ法(8) を適用した。ステアリングエントロピが小さいと,時系列の操舵角がスムーズに推移し,いわゆる修正操舵が少ない。制御なし,減速GVCのみ,と加減速GVCの3仕様について比較した結果をFig. 20に示す。まず,減速GVCによって修正操舵が減り,更に加速GVCが加わることで更に修正操舵が減少することが分かる。 Fig. 18には,前後加速度と横加速度を示した。まず,e-GVC Plusがあると,操舵初期に早く減速し,その後も横加速度の変容に沿って,前後加速度が生じる。横加速度の立ち上がりで,e-GVC Plusがあると大きく減速するが,切り戻し操舵では加速するゆえ,車速低下は抑えられている。また,ヨーレイトと同様に,e-GVC Plusがあると横加速度は穏やかに収まる。 Fig. 19に示したワインディング路走行中の操舵角について,155秒から175秒に絞った時系列グラフをFig. 21に示す。制御なし (青線) は舵角変化の曲率が大きく,ドライバーが急峻に操舵角を変えていることが分かる。一方で,減速GVCのみ (緑線) や加減速GVC (橙線) は,舵角変化の曲率が小さく滑らかに操舵している。161秒や169秒辺りの切り戻しに注目すると,減速GVCのみ (緑線) よりも,加減速GVC (橙線) は緩やかに切り戻していることが分かる。このような時系列でみた操舵角のスムーズさが,Fig. 20のステアリングエントロピに表れており,加減速GVCの実験仕様が最もステアリングエントロピが小さく,修正操舵が少なかったと考えられる。―18―4.まとめFig. 17 Yaw RateFig. 18 Longitudinal and Lateral Acceleration3.3 ワインディングコースにおける修正操舵の低減 ドライバーがペダル操作で50[km/h]の一定速を保ち,コーナーが連続したワインディング路を走行し,操舵角を計測した。計測した操舵角をFig. 19に示す。1周200秒のコースを2周走行したデータである。制御なし,減速GVCのみ,と加減速GVC (e-GVC plus) の3仕様でほとんど同じように走行している。Fig. 19 Steering Wheel Angle Behavior on Winding CourseFig. 21 Steering Wheel Angle Behavior (155-175 sec.) Fig. 20 Steering Entropy無で変わらない。e-GVC Plusがないと,直進に戻る際に車両運動の収まりが悪く,ヨーレイトが揺らぎ,収束に時間を要する。効果 高応答エンジンを用いたGVC(1) に直接ヨーモーメント制御を加えたGVC Plus(2) から,更に高応答な電気モーターを活用して切り戻し操舵時の加速制御を加えたe-GVC PlusをMX30 EVモデルで初めて実現した。 電気モーターという高応答なアクチュエータを用いたGVCによって得られる前後,横加速度や,ロール・ピッチなどの車体姿勢角が滑らかに連係する運動特性は,

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