マツダ技報 2021 No.38
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(3)EVサウンドの効果 EVサウンドの効果を検証するため,減速・旋回・加速シーンと上り・下り勾配をもつワインディングコースにて,サウンドなし(Base)とあり(Motor Pedal)による車速のばらつきを比較計測した。ドライバーは6名で,コース上に表示されている車速を目標とした。Fig. 16 に,計測区間内の6名の車速のばらつきを平均した結果を示す。―24―3.1 ねらい EVでは,ICEのエンジンブレーキと異なり,回生トルクによってより強いアクセルオフ減速度を設定できる。これにより,街中においては強いアクセルオフ減速度によって素早い減速が可能となる一方,例えば上り坂では強いアクセルオフ減速度は車速の低下を招いてしまうし,車速を一定に保ちたい高速道路においてはアクセルペダルを緩めることができない状況となる。 そこでMX30 EVモデルでは,勾配などの走行シーン変化に応じて,アクセルオフによるモータートルクの回生減速と惰行(コースティング)をドライバーが自在に選択可能なステアリングホイールパドルを開発した。 ステアリングホイールパドルのコンセプトをFig. 17 に示す。パドル操作によってアクセルペダルストロークに対する加速度・減速度の割り当てを変化させることで,まるで車両後部に取り付けたパラシュートが開いたかのように車両の走行抵抗を自在にコントロールできる感覚を目指した。Fig. 17 Concept of Steering Wheel Paddle3.2 特徴 ステアリングホイールパドルは計5段とし,デフォルトのDレンジを中央にレイアウトし,左側に2段,右側にも2段と対称形に設定した(Fig. 18)。 左側のパドルを操作すると,アクセルオフ減速度が強3. ステアリングホイールパドルFig. 14 Configuration of the EV SoundFig. 15 An Example of ConsonaceFig. 16 EV Sound E■ect Result/Test Condition増えすぎると走りを重ったるく感じてしまうため,周波数の下限も設定した。 次数の組み合わせついては,協和度(Fig. 15)の高い組み合わせの中から,速度変化の分かり易さと聞き心地の良さを両立する最適なものを選定した。また,アクセルを踏み込んでも強い加速度が得られない高車速域では,高めの周波数と不協和音(Fig. 14 の白点線領域)を設定することで加速感を演出した。 この結果から,EVサウンドの効果によって,車速のばらつきが全体で約40%低減できることがわかった。ねらいどおり,モータートルクに同期したサウンドを乗員に伝えることで,より正確に走りをコントロールできることを確認した。

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