―27―2.1 理想のシフト操作性 安心・安全なシフト操作性実現のためには,次の3点が備わっていることが重要であると考え,エレキシフトの利点を生かし,「いつでも,誰もが,迷いなく正確に操作できる」ことでシフト操作時でも運転に注力できるように操作性を進化させた。・現在のポジションの認識・入れたいポジションの操作方向の認識・ポジションに入ったことの認識2.2 シフト方式 シフトの基本機能は,車両を駐車するために静止させる「P」,車両の駆動力を後退方向に伝える「R」,車両の駆動力を遮断する「N」,車両の駆動力を前進方向に伝える「D」の4つの機能がある。 シフト操作は通常,ブレーキ操作やステアリング操作との連携で行われる。ブレーキやステアリング操作は足,腕といった大きな筋肉を動かして行われるため,操作時の実感が同じように得られることで「ポジションに入ったことの認識」ができると考えている。よってシフト操作は,ボタンやダイヤルのような指先操作ではなく,腕全体を動かして操作時の実感が得られる従来方式のレバータイプを選定した。 その上で,MX30のシフターは「現在のポジションの認識」と「ポジションに入ったことの認識」が容易な,従来のATシフターと同様にPRNDのシフトポジションに応じてレバー位置が固定されるステーショナリー式とした。 Fig. 2は狭い路地で焦ってD→R,R→D操作を繰り返しUターンを行う状況を設定して,シフト完了から手を放すまでの平均時間を,レバーが固定されるステーショナリー式とレバーが基準位置に戻るモーメンタリー式で比較したものである。ステーショナリー式にはPRNDのあるポジションから別のポジションに切り替える際の操作力に節度があるものを,モーメンタリー式にはそのような節度がないものを用いた。その結果,7名中6名でステーショナリー式の方が手を放す時間が短くなっている。これはポジションが変わる際に操作力に節度があり,その節度をユーザーが自身の操作に連動した2. シフト操作性Fig. 2 Time from the Completion of Shift to the Release of Their HandFig. 3 Shift Pattern2.3 シフター配置とシフト操作特性(1)シフター配置 シフターの配置は,小柄な方から大柄な方まで操作時にシートから肩をずらすことなく操作できる状態を目指した。内装デザインであるフローティングコンソールの実現に貢献した。そして,➁と➂については,ドライバーが操作ミスしても,安全を確保する制御をシフトの電子制御化を活用して実装した上で,理想的な操作性を織り込んだシフターと適合するメーター表示などを丁寧に作り込んだ。それらを実現した考え方や技術について,説明していく。フィードバックとして,腕を通して感じられることで「ポジションに入ったことの認識」がしやすいことを示している。 更にドライバーの認知,判断,操作をしやすくするために,シフトパターンは前進⇔後退を前後操作,発進⇔停止を左右操作という,一機能,一方向,かつ,突き当て操作とすることで,確実に操作できるようにし,PポジションはRポジションの横で運転席側とした(Fig. 3)。Pポジションを運転席側としたのは,人は腕を前側に動かす際,身体を基準に外に向かう方向に力が出やすい特性をもっており,D→R操作時に誤ってPに入ってしまう誤操作を防止するためである。特に駐車場で車を出し入れする上で前進⇔後退を繰り返すシーンで有効と考えている。 MX30では,車両の駐車/前進/後退の安全上重要な操作を突き当て操作により,確実に認知できるようにした操作性の進化に加えて,従来のメーター内へのポジション表示・シフター横のポジション表示・Rポジションでのチャイムにより,視覚・聴覚機能を合わせることで「現在のポジションの認識」,「入れたいポジションの操作方向の認識」,「ポジションに入ったことの認識」を向上させている。
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