マツダ技報 2021 No.38
40/197

―33―sremotsucrofseuaVytil troppus auqevitcartteuqroTdeepS tseuqer rooM t l aotlygoonhceT2.1 ハードウェア構成 Fig. 1 にMX30の電気駆動システムの構成を示す。駆動用モーターは永久磁石同期モーターであり,減速機を介してドライブシャフトへ接続される。リチウムイオン電池で構成される駆動用バッテリーからの直流電流はインバーターにより三相交流電流に変換され,駆動用モーターにより走行する。減速時はブレーキユニットと協調しながらモーターで発電をおこない,減速エネルギーを電力に変換して駆動用バッテリーに蓄える(協調回生)。DC/DCコンバーターは高電圧を12Vに降圧することで,ヘッドライトや各コントローラーなどの12Vで作動する補機への電力供給をおこなう。電動空調システムはコンプレッサー(ヒートポンプ)とPTCヒーターで構成され,駆動用バッテリーから電力が供給される。Fig. 1 Schematic Diagram of MX30 Electric Drive 2.2 コントローラー構成 MX30は,駆動用バッテリーや駆動用モーターといった個別ユニットごとにコントローラーを設け,各ユニット状態をモニターし,制御している。同時に,Powertrain Control Module (PCM) が,それら個別ユニットと協調し,全ての電気駆動システムの動作を統合制御している。 Battery Energy Control Module (BECM) は,バッテリー充電量や温度などの状態を把握し,バッテリーを保護するための入出力可能電力を演算し,これら情報をPCMに送信している。 Drive Motor Control Module (DMCM) は,PCMが送信する要求モータートルクの実現を担う。駆動用バッテリーからの直流電圧を交流に変換し,走行に必要な電力2. 電気駆動システム構成3. バッテリーを使い切る技術Pout Pin Battery current Batter voltage PCM BECM High Voltage Battery Inverter DMCM Motor Reduction Gears Elec. A/C System DC/DC Converter for 12V devices Controlof torsional Attractivedriving feelingElectricity consumption and cruising rangeMaximizing Battery PerformanceBattery protection Battery technologycooling/HeatingNVHPrevent shock of reduction gear gapShiftshock vibrationImprovementof power consumption and cruising rangeCooperated Hydraulic and Regenerative BrakingCreepcutProtectionof vehicle systemProtectionof reduction gearReduce excessive shock whenslip & gripVehiclestability HMIMeet Driversupporting regulationsinformationQuietness and SoundLDAShockcontrol of release EPB etc.controlGrillshuttercontrolFailsafeSystemFig. 2 The Iceberg Structure of Electric-Driving 3.1 バッテリーを使い切る意義 エンジンとバッテリーの2つのパワーソースをもつハイブリッド車とは異なり,BEVでは駆動用バッテリーが唯一のパワーソースである。そのため,走りの魅力品質を安定的に得るには,温度や充電状態によって変化しないバッテリー出力性能が必要である。また,減速エネルギーを無駄なく回生し,電費を向上するためにも,安定Technologiesを駆動用モーターに供給している。また,コイル等各部温度やモーター回転数などの状態を把握し,これら情報をPCMに送信している。 PCMは,ドライバーの意図どおりに車両を駆動・減速させるため,BECMやDMCMからの情報と運転者のシフトレバー操作やアクセル操作を統合的に判断し,駆動用モーターのトルクをコントロールしている。2.3 制御機能と要素技術 PCMを中心とした電気駆動システムは多くの機能をもっており,それらは種々の要素技術によって実現している。Fig. 2 に,要素技術のイメージを示す。 例えば,システム保護ではモーターインバーターの冷却や,駆動輪がスリップ状態から復帰する際の衝撃を緩和する。電費(電力消費率)・航続可能距離の向上では,空気抵抗を低減するグリルシャッタなどを採用した。クリープカットはブレーキペダルを踏んで停車している際,クリープトルクをゼロとして電力消費を抑えるものだが,クリープ復帰時にはショックを発生させない制御技術が必要となる。また,本稿の主題である「バッテリーを使い切る技術」もこれら要素技術の一つである。要素技術に支えられ,走りの魅力品質や優れた電力消費率などの性能を提供している。

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る