マツダ技報 2021 No.38
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―41―4. MBD適用結果の確認早期化Fig. 5 BEVHILS SchematicFig. 6 BEVHILS (Change models to actual machines) 新規機能には網羅的な検証が必要とされていたが,高速MILSと違いリアルタイムの検証となるHILSは検証数に応じて工数が跳ね上がる。新機能の検証として約2500パターンの検証が必要と判明し,自動検証機能を構築することで検証の効率化を図った。 具体的には,手動で操作していたさまざまなHILSパラメーター操作をパターン別に実施するシーケンスを作成し,ECUの計測ツールと組み合わせ,インプットされた指示に従い操作パターンを順次実行・計測する機能を構築した。複数のテストケースのインプットを自動化し高Fig. 7 Breadboard Evaluation また,電動パーキングロックアクチュエータなどBEVから新たに電子制御に切り替わった部品は,HILSでの早期検証ニーズが多数あった。これに対応すべく,プラントモデル上にECU単位で信号を切り替える機能を実装し,プラントモデル⇔実部品(PCM以外の制御部品や充電設備を模擬するアナライザー)を検証用途に合わせて付け替え可能としたことで,複雑な協調制御パターンを開発初期の段階から検証できる環境を実現した(Fig. 6)。効率の検証を実現した。また,上記の自動検証環境をベースに故障模擬機能を組み合わせることで,天落や地絡などの故障診断の検証も自動化に対応した。 これらの自動検証環境は,膨大な数の検証を一貫したテストパターンで効率的に検証できることから,オペレーターによる操作のばらつきが抑制され,テストの再現性を向上させることができた。 高速MILS/HILSでの検証対象はPCM以外のモデルであり,モデルでは表現できない機能の成立性検証や,高電圧安全の担保という領域を,その後の開発へフィードバックする施策を実車完成前に検証できる仕組みを導入した。 具体的には2つの施策を行った。1つは,空調制御などの車両系の制御ユニット,DMCMやDCDCといった高電圧コンポーネントを含むPT系の制御ユニットを組み合わせた12V電源制御,通信検証を行うブレッドボード評価(Fig. 7)である。本検証工程の追加により,PTシステムでの変化点であるCAN通信が中心のシステムの確認を実車での適合前に可能となり,不具合の早期抽出,MILS/HILSのプラントモデルとのコリレーション分析を可能とした。 もう1つは高電圧コンポーネント等を中心に,実際に高電圧を使用している起動遮断制御から駆動力制御,高電圧安全までの電駆システム検証が行える電駆システムベンチ評価(Fig. 8)である。 本検証の追加により,高電圧を接続するまでのシーケンス制御や,実際に高電圧を使用する駆動力制御や12Vへの電源供給制御,普通充電制御の実施,また,高電圧を扱うために必要な安全機能,具体例としては,高電圧遮断時の低電圧化や実機では起こし難い故障時のフェールセーフといった,初期モデルでの机上設計状態では表現が難しい機能のチェックを早期に行い,モデルへのフィードバックを行い,その後は実機レスでの改善,改良を加速した。

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