マツダ技報 2021 No.38
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(1)机上検証環境 開発の初期段階にて充電制御ソフトウェアを効率的に開発・検証するため机上検証環境(MILS)を構築した。以下,MILSを構成する各モデルを紹介する。―49―AC ChargeDC Charge(COMBO)DC Charge(CHAdeMO)PowerInformationAC ChargeDC Charge(COMBO)DC Charge(CHAdeMO)Charger Sequence informationVehicle Sequence informationAC ChargeDC Charge(COMBO)Target VoltageTarget CurrentVoltageCurrentDriveInformationTarget VoltageTarget CurrentAC ChargeDC Charge(COMBO)DC Charge(CHAdeMO)Charger informationCharging CurrentFig. 1 MX30 Charging Port(CCS Type2)3. EV の充電システム開発手法ChargerModelChargerPlantModelOBCModelVehiclePlantModelPCMmodelBatteryModelFig. 2 Fixed and Variable Area Image Diagram of 3.3 充電システムの検証環境構築 充電システムと制御ソフトウェアの検証環境として,MILS及びHILSを開発した。これらの構成はFig. 3のとおりで,充電設備側と車両側それぞれの制御シーケンスが確認できるよう,充電設備モデルを検証環境に組み込んだ。以下,構築した各モデルと検証環境を,机上と実車検証環境の大きく2つに分けて紹介する。Fig. 3 Charging System Verification EnvironmentCharging System Control■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 前章で述べた課題を解決するために,開発に際し以下の施策を講じた。(1)一括開発を実現する充電システムの構成:ハードウェア変更最少で各種充電規格に対応可能な充電システム構成を検討・採用する。(2)充電システム制御ソフトウェアのMotherSoftware構造:ソフトウェア変更最少で各種充電規格に対応する制御ソフトウェア構造を採用する。(3)充電システムの検証環境構築:効率的にソフトウェア/ハードウェア(車両)検証を進めるための検証環境を開発する。3.1 一括開発を実現する充電システムの構成 MX30の充電システムは各種充電規格に対応するためのハードウェア変更を最小にするために次の構成とした。構成ユニットは主にOBC (On Board Charger),駆動用バッテリー,PCM(Power Control Module)から構成される。OBCはAC/DC変換,充電I/Fのコントロール及び普通充電のTYPE1とTYPE2の切り替えとCCSの通信を行う。PCMは高電圧制御,目標充電電力の計算と充電器とのI/Fのコントロールを行い,更に日本仕向けのみCHAdeMO充電用I/Fをコントロールする。本構成とすることで普通充電のTYPE変更(TYPE1↔2)はOBCのみで対応でき,急速充電の規格変更(CCS↔ CHAdeMO)はPCMで対応できるようになり,規格変更による影響範囲をシステム構成上で最小化している。3.2 充電システム制御ソフトウェアのMotherSoftware 車両-設備間の充電シーケンスや充電量をコントロールする充電システム制御ソフトウェアには充電規格ごとの設計変更を最小とするためにMotherSoftware構造を開発し,PCMに実装した。このMotherSoftware構造では主に充電ソフトウェアの主要機能を固定と変動に分類・管理することで変動領域(設計変更による影響範囲)構造の最小化を目指した。例えば各種充電規格へ対応するソフトウェア部分を変動と位置付けて機能配分することで充電規格の変更(CHAdeMO↔CCS等)を効率的に対応できるようにした。 このMotherSoftware構造のイメージを図にあらわしたものがFig. 2である。PCMの制御は1つのメインソフトウェア(MotherSoftware)で管理しており,充電システム制御ソフトウェアを他の規格に対応させることを容易にする仕組みを採用した。例を挙げると,Core部分に該当する高電圧の制御を変更する場合にMotherSoftwareを変更すれば欧州,北米,日本への変更が同時に行われることを意味する。また,今後導入が予想される給電システム等の追加にも同様にして効率的に対応できる仕組みとなっている。MX30ではこの仕組みを活用し欧州,日本,北米,豪州の仕向け地に適合させた充電システムを効率的に同時開発した。

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