マツダ技報 2021 No.38
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1)設備制御モデル 設備制御モデルは車両に接続された充電設備の充電時の振る舞いを再現したものである。具体的には,充電タイプ(CCS,CHAdeMO,普通充電)で指定された充電方式に応じて車両側に対してスイッチ制御及び充電情報/状態設定を行い,コネクタ勘合~車両システムの起動~充電開始手順~充電動作~充電終了手順~車両システムの終了~コネクタ抜去までの充電シーケンス制御を再現する。更に設備制御モデルは充電のインターフェースに関して市場設備独自の振る舞い(遅れ,独自仕様等)を再現できる仕組みにした。具体的には充電のシーケンスに関わる信号の応答時間等の挙動を市場で確認した設備挙動と一致させ,車両側制御と協調動作した際の成立性を机上で確認できるようにしている。これは過去の充電システム開発にて車両と設備の挙動タイミングのずれにより異常を誤検知する等の問題を経験したことから,その挙動をMILSで再現することで,充電システム制御の成立性を早期に確認できる仕組みとしたものである。2)PCMモデル PCMモデルは車両コントローラーの制御モデルで,主に設備側に対してスイッチ制御及び充電情報/状態送信を行っている。具体的にはコネクタ勘合認識~高電圧起動~充電開始~充電動作~充電終了判定~遮断までの充電シーケンス制御を再現する。3)設備プラントモデル 設備プラントモデルは車両に接続された充電設備そのものを再現したものである。具体的には,設備制御モデルからの制御信号(スイッチ,電流指示)に応じて設備制御モデルへのスイッチ状態通知,車両側への電流指示値設定を行う。4) 車両プラントモデル 車両プラントモデルは設備プラントモデルから受け取った充電情報から,車両側のLiBの電圧・電流値や高電圧回路の状態を再現する。 MILSでは上記の制御/プラントモデル全体を自動実行できる仕組みも取り入れており,一部運用を開始している。今回MX30で収集した市場データを設備モデルへ適用することで,次期モデル以降にて更なる開発効率化を目指した机上検証の完全自動化も準備している。(2)実車検証環境 この環境により各種充電規格,電源タイプ(単相,3相,電圧)の変更,異常状態や故障の模擬などが容易に行えるようになった。加えて市場設備ユニーク挙動の再現も行うことができ,例えば欧州市場の充電設備の挙動を開発拠点の日本で再現できるようになり,不具合原因の特定などが容易になった(Fig. 4)。―50―4. 充電設備との互換性開発Fig. 4 Real Vehicle Verification EquipmentFig. 5 Verification of Conformity with Charging 4.2 市場互換性確認(Infield Test) 3章で述べた検証環境で事前に検証していたにもかかわらず市場での確認では互換性に関する問題が確認された。それらは規格に則って構築された机上検証環境では発見できない設備独自の仕様が起因していた。今回知見Standards これまでにMILSやHILSで開発してきた充電システムの最終確認のため,MX30の開発では実車を用いた互換性検証をLab(一般の充電設備ではないClosedな環境)と各仕向け地にて行った。なおここでの「互換性」とは車両-設備間で規格に則った充電を開始・継続できるかどうかを指す。4.1 LabTestによる充電設備との互換性検証 MX30の試作車両では初めにLabにて各仕向地のシェアの高い充電設備と互換性検証を行った。その結果ある特定の設備と結合することで判明する規格不適合箇所(車両と設備共)や充電開始できない問題を洗い出すことができた(Fig. 5)。

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