マツダ技報 2021 No.38
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(1) 藤中ほか:デミオEVの紹介,マツダ技報,No.30, MX30の開発では一括構造を構築し効率的に各仕向け地の充電方式に対応した。また充電システム検証用の―51― 土井 政寛 MILS,HILS環境を構築することで実車検証前に充電システムの成立性確認ができるようになった。ところがMILS,HILSだけでは発見しきれない互換性に関する問題も少なからず発生することも確認された。このため実車を用いた市場結合性確認を織り交ぜながら全方位で充電システムの品質を確保していく必要があると理解している。 MX30の開発はコロナ渦での開発となり,特に各国への入国が制限され現地での試験が難しい状況での活動となった。しかしそのような環境下においても現地サプライヤー様,関連会社の皆様のご協力のおかげで評価を進めていただくことができ,当初予定していた評価を全て完了することができた。末筆ながらご協力いただいきました全ての関係者の皆様に改めて感謝を申し上げたい。pp.114-119(2012) 5. まとめFig. 6 Di■erence in Charging Current Riseを得られたこのような互換性開発の難しさを示す具体例をいくつか紹介する。市場互換性確認で得られた知見の例-➀DC充電(急速充電) CCS充電設備との互換性確認では充電設備によって充電電流の立ち上がり方にかなりの差異があることが確認されている(Fig. 6)。Manufacture Aの電流の立ち上がり方が最も一般的な充電電流挙動であるが,市場には B~Eのような挙動を示す設備も確認された。こうした充電電流挙動の違いがあることをしっかり認識し,またこれに対して柔軟に対応できる充電制御システムを準備しておかないと,異常を誤検知しかねない。MX30ではこうした充電設備の特色の違いにも対応できるよう,ある程度の制御余裕度を持たせたシステム開発を行った。-➁AC充電(普通充電) 普通充電設備及び普通充電ケーブルでの互換性確認では,欧州メーカー製の充電ケーブル(EVSE)で充電規格上では定義されていない独自の異常判定仕様をもっているものが確認された。これは車両側との接続のタイミングによっては異常判定し,充電出来ない状態に至ってしまうものであった。この充電ケーブルの仕様は充電規格上必要とされてはいないが,車両側で対応しなければ充電が開始・継続できない仕様であった。本件についても車両側の充電シーケンスのタイミングをある程度余裕度を持たせた制御システム挙動とすることで対応を実施した。 以上より現状の充電システムの検証についてはMILSやHILSのような仮想環境だけではどうしても発見・解決できない事例が少なからず存在するため,現時点では実車による結合性確認は外せない検証となっている。■著 者■藤原 康祐参考文献德永 隆司

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