マツダ技報 2021 No.38
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(2)ダメージ量の算出 SN線図は規則的な繰り返し(一定加速度の)振動に対する応力の関係を表すが,実際の電池パックの振動加速度は刻一刻と変化し続けるため,実機結果をSN線図に当てはめることができない。そこで,社内テストコースの走行データを用いて電池パックに生涯で入力される振動総ダメージ量を用いた。式(2)に総ダメージ量を与えると,繰り返し回数と1回あたりの振動加速度の関係が決まる。(2) Fig. 4はランダム実働波形を示している。この波形の疲労寿命予測を行うために,応力・ひずみ頻度の計数手法の一つであるレインフロー法を適用して入力加速度回数を算出している。―54―ni−∑σ1mTiiFig. 3 Relationship between SN Curve and Allowable Fig. 4 Endurance Test Road Vibration WaveformStress= Fig. 5 Random Working Waveform to which Rainflow  レインフロー法は別名「雨だれ法」とも呼ばれている。計数条件としてFig. 5に示す2’,3’,5’,6’のように流れが止められる場合,及び1,4,7,8,のように流れが止められずに底なしで水が流れ落ちる場合,その水が流れた横方向の長さが半サイクル分の波の全振幅(振動加速度)としてカウントする。振動加速度とカウント数を式(2)へ代入し,社内テストコース走行時のダメージ量を算出した。2.3 認証試験(振動)について 開発したクルマをお客様へお届けするために市場環境適合性を確認する認証試験を受験している。認証試験については2021年EU仕向け:UNR100,中国仕向け:GB規格(GB38031)の2つがあり,いずれも電池パックに対し実施する規格となっている(Table 1)。Table 1 List of Vibration Test ConditionsMethod is Applied非鉄金属は疲労限界が存在しないものもあるため,以下のやり方を採用した。 繰り返し回数に任意の値(鉄の疲労限回数程度)を与え,それに対し各部品のピーク応力が許容応力以下とすることで,振動ダメージに対する部品信頼性を保証した(Fig. 3)。振動ダメージの式:D σ:加速度[G] T:加速度が σ のときの回数 m:特定の疲労メカニズムに関する材料定数 ダメージ量を計算する過程で,市場のさまざまな振動を模擬した試験路走行を行い,発生するランダム実働波形の振動から特定入力加速度を決定している。 マツダでは走行時の振動波形を測定しており,搭載位置ごとに電子部品の振動評価条件を決定している。UNR100やGB規格に対し,車両走行時の電池締結部への振動加速度がそれ以上になっており,かつ極端に大きい振動加速度が入っていないことを確認することで,認証試験の耐振動性を保証するとともに,振動評価条件の確からしさを確認している。

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