マツダ技報 2021 No.38
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 Fig. 6にMX30の電池パックを示す。本電池パックは耐振動技術として以下(1)~(4)を折り込んでいる。(1)電池モジュールの配置 電池モジュールとは電池セルを直並列につなげた集合体のことである。MX30では1モジュールあたり電池セルが12個(6直列2並列)で接続している。筐体に搭載する電池モジュールは左右対称にすることで重量の偏りをなくしている。これにより振動時のねじれを抑え,電池パック全体にかかる応力を均等に分配している。後部の2段積の電池モジュールが2個なくなった場合,後部モジュールにかかる加速度が1.3倍程度に増幅されてダメージが増えることを実機で確認しており,現在のレイアウトが最適と考える。 また,電池の上部にジャンクションボックスとコントロールユニットといった電子部品を置かない構造にすることで,共振の重なりを物理的に起こさせないようにし,部品の過大ダメージを防止している。(2)高電圧バスバーの形状 高電圧バスバーは電池モジュール間をつなぐ部品であり,Fig. 6のオレンジ色の部品である。隣り合う電池端子を互いに接続するとき,締結位置ばらつき(電池モジュールの搭載位置のばらつき)により締結部に発生する応力に加え,充放電時の膨張収縮や振動,衝撃に対する応力を分散させるため,曲げ形状のバスバーを使用している。上段-下段のモジュールをつなげるバスバーは,伸縮自在なバスバーケーブルを使用している。またバスバーケーブルは,電池端子への応力を下げるため,固定時の反力の低いケーブルカバーの採用や,上下に振れにくい位置で固定させるなどの工夫を凝らしている。 上記(1)(2)は技術開発における限界(破損させる―55―3.1 電池パック内レイアウト 電池パック内レイアウトを決定する上で,スペース内に電池を詰め込むエネルギー高密度化と同時に,共振や応力集中させないブレークスルーが必要であった。本章では具体的に電池パックに折り込んだ技術を説明する。Fig. 6 MX30 High-Voltage Battery Pack3. MX30電池パックの耐振動開発Fig. 7 Considering Design Change of Junction Box Fig. 8 Considering of Control Module Bracket Less Fig. 7,8 に示すグラフは車両も含めた振動解析結果であり,振動加速度はほとんど変わらない,もしくは低下することから,いずれもブラケットの形状や締結点の変更による悪化はないと考える。 Fig. 8に示すコントロールユニットのブラケットレスについては,締結箇所周辺の剛性を向上させたことにより,車両前後左右方向に対しての振動加速度を低減させることができた。また,この2つの対策により,約Bracketまでの耐久)試験により,対策する箇所を把握することで耐振動構造仕様に落とし込み設計をすることができた。これらを電池パックに実装することにより,市場耐振動性保証目標を大きくクリアし,お客様にいつまでも安心してお使いいただける電池パックを開発した。上記➀➁は技術開発における耐久試験により,応力がかかりやすい箇所を把握することで対策内容を決めている。これらを電池パックに実装することにより,市場の耐振動性保証(走行可能距離)目標の4倍相当を保証している。(3)ブラケット形状の最適化 ジャンクションボックスとコントロールユニットそれぞれを固定させるブラケットを設計しており,重量の低減をしつつ,耐振動性能を悪化させない手段について解析ベースで検討した。Fig. 7にジャンクションブラケットの最適化に関する検証内容を,Fig. 8にコントロールユニットブラケットの最適化に関する検証内容を示す。

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