マツダ技報 2021 No.38
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(1) 社団法人 日本材料学会:材料強度学(2004)■著 者■―56― 伊藤 智昭 岸田 直樹 0.9kgの軽量化を行うことができた。(4)冷却配管の2階建ての形状変更 電池パックには,電池温度を最適にコントロールするため,電池パック筐体下側のロアケース上に冷却配管を設置している。電池冷却配管は各電池モジュールの底面をとおるように設計しているため,電池モジュールの2段積構造において,下段と上段の位相差により冷却配管に加わる応力を低減させることが課題であった。 Fig. 9に冷却配管構造を載せる。この課題に対して以下➀➁の対策を折り込んだ。 ➀ロアケースから上段の電池冷却配管へ分配するディストリビュータを,共振時上段の電池の位相に近い箇所に締結することで引っ張り圧縮を抑え,ねじれが発生しにくい角度で締結することで応力を低減させた。 ➁上段から下段へ向かう冷却配管はゴムを採用し,左右にクロスさせることで,上下方向から加わる応力を低減させた。これらの対策により耐振動性の優れた2段積電池の冷却構造を実現させた。Fig. 9 Battery Pack Cooling Pipe3.2 電池パックのCAEモデル 解析精度向上にあたり,モデル上での実機の再現性とメッシュ細分化が必須となるが,精度や解析時間の寄与度を考えて適度なレベルに調整する。そこで,さまざまな形状の電池パックや電子部品に対し,振動評価やハンマリング評価を行い,CAEモデル精度の妥当性検証を行った。 解析精度向上のため,上下/左右/前後3軸方向に対しての掃引振動を与え,各部位の伝達経路ごと・周波数ごとの振動伝達特性を評価することで解析とのコリレーションを行った。予測精度が低い箇所については原因分析を行った上でモデルを最適化していくことで,予測精度を向上させ,耐振動性能の優れた高電圧電池パックを開発した。 Fig. 10に電池パックの解析モデルを示す。電池モジュール,コントロールモジュール,バスバー,ジャンクションボックス,サービスプラグなど電子部品はモデル上で実機の形状を再現させており,電子部品の振動加速度を表現・再現ができている。 解析精度や振動保証への影響の小さい電池内部(セル)は重量のみをモデル化し,一方で応力が集中する電池締結部位は詳細までモデル化させることで,解析時間を抑えつつ必要な箇所の精度を上げる工夫を行っている。4. おわりにFig. 10 MX30 High-Voltage Battery Pack CAE Model 本稿で紹介した耐振動のモデルベース開発により,早期に振動対策を折り込み,設計検討段階から重量最小化ができるようになった。 MX30は,マツダ初の量産電気自動車であると同時に,初めてこの開発手法を採用した車両であり,実機の耐久テストにおいてこの効果を確認している。今後もこの手法を発展させ,マツダの電気駆動車両を安心安全なものとして全てのお客様に届けていきたい。花田 裕参考文献丹羽 貴大 鍋島 範之

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