マツダ技報 2021 No.38
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―58―Fig. 1 Straight Cross MemberFig. 2 Reinf-Center2.2 バッテリーパック結合部構造 BEVのプラットフォームで最も重要視した機能の1つに,重量物であるバッテリーパックの保持がある。300kgを超えるバッテリーパックを保持する構造について紹介する。 バッテリーパックはフロア中央部を囲うように,主に左右のフロアフレーム,No.4クロスメンバーに計20か所で締結する。そのうち14か所は,フロントとリヤの前後を連結するフロアフレームへの締結であり,バッテリーパックのサイド部を締結している。これらの部位にFig. 3 Battery Pack Mounting Structure2.3 バッテリーパック活用によるボディー剛性向上 ボディーはドライバーの操舵によって生じるサスペンションからの入力に遅れなく応答し,ドライバーに伝えなければならない。BEVはベースモデルより車両重量が約200kg重く,サスペンション支持部をはじめボディー全体にかかる入力もベースモデルより大きくなる。BEVではバッテリーパックをボディー骨格の一部として活かし,四輪対角剛性に代表されるボディー剛性を向上させた。 バッテリーパックの土台であるロアケースは,内部に3本のクロスメンバーを配置する。クロスメンバーの延長線上をパイプ材と高強度ボルトでボディーと結合する。 これらとフロントフロアに配置した2本のクロスメンバーから環状構造を形成し四輪対角剛性を向上させた(Fig. 4)。 また,リヤサスペンション固定部前方を補強しつつロアケースと結合し,後方のリヤフロア部クロスメンバーとロアケース後部を結合,環状構造とすることでリヤサスペンションの支持剛性を高めている(Fig. 5)。 プラットフォームから派生させている。フロントフロア部は,バッテリーパックをレイアウトすることから,ベースとの構造の違いに大きな特徴をもつ。高電圧部品であるバッテリーパックは,キャビンの外側にレイアウトしている。これは衝突時に乗員が高電圧部品に直接接触し感電するのを防ぐことを目的としている。また,フロントフレームやサイドシル,フロアフレームといった骨格部材よりボディー内側に配置し,衝突時の変形が及びにくい部位にレイアウトし保護する考え方である。 また,側面からの衝突に対しバッテリーパックをレイアウトするボディー中央部の変形を抑制するため,従来車のトンネル部にあたる湾曲形状を廃止し,フロア上のクロスメンバーは左右サイドシルをストレートにつなぐ構造とした(Fig. 1)。 トンネル形状の廃止によりフロア中央部の上下剛性が低下する。その機能を補うべく,フロア前後をつなぐセンターレインをボルトアップ結合する構造を採用した。更にセンターレインとシートの土台となる各クロスメンバーとの結合部を強化することで,従来車同等のシート取り付け部剛性を確保した(Fig. 2)。は,主に車両上下方向の荷重と車両前後方向軸まわりのモーメント荷重が負荷される。締結部に必要な強度・剛性をより効果的に確保するため,パイプ材を骨格とするフロアフレームの断面全体で支える構造とした。こうすることで,締結面の局部変形や応力集中を抑制しつつ,ボディーとバッテリーパックを強固に結合した(Fig. 3)。

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