マツダ技報 2021 No.38
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(2)バッテリーのロアケースを活用したロードパス構造 MAZDA3では前面衝突時にキックアップが車体中心側に倒れる変形を抑制するために,トンネル下面レインで前後方向の力で支える構造を採用している(Fig. 4)。MX30ではバッテリーパックを搭載するために,トンネル下面レインを廃止した。そのため,ロアケースを活用して左右のキックアップ同士をつなげ,トンネル下面レインの前後方向強度と同等の強度を左右方向で支える構造とすることで,衝突性能とバッテリーパックの搭載性を両立した(Fig. 5,6)。―63―2.1 前突時のバックアップストラクチャ構造 MAZDA3(1)では衝突時の大荷重を複数の方向に分散させることで効率よく吸収するマルチロードパス構造を採用している。MX30ではフロア下にバッテリーパックを搭載するため,側面衝突からのバッテリーパックの保護性能と前面衝突時のロードパス構造,バッテリーパックの搭載空間の確保の両立が必要となった。そのために,前面衝突と側面衝突のロードパスを両立させるトンネル構造と,バッテリーパックの土台であるロアケースを活用した前突マルチロードパス構造の開発に取り組んだ。(1)前面衝突と側面衝突を両立するトンネル構造 MAZDA3ではトンネルをダッシュパネルから#3クロスメンバーまで通すことで,前面衝突時のフロア変形を抑える機能を持たせていた(Fig. 1)。MX30では3.2節で述べるように側面衝突からバッテリーパックを保護するために,トンネル構造を前側だけ残して廃止しフロア上のクロスメンバーを車両横通しでストレートに通したため,前面衝突時のフロアのピッチ方向のモーメント強度が低下した(Fig.2)。このモーメント強度を補うため,クロスメンバーFig. 1 Tunnel Load Path of MAZDA3Fig. 2 Comparison of Load Path with Tunnel and 2. 前面衝突性能開発withoutFig. 4 Tunnel Lower Reinf. of MAZDA3Fig. 6 Comparison of Force-Stroke CurveFig. 3 Structure of Tunnel of MX30Fig. 5 Battery Lower Case of MX30空間を両立させる構造,及び特徴的な構造であるフリースタイルドア採用によるBピラーレスでのマルチロードパスの実現に取り組んだ。 本稿では,衝突安全性能と新型MX30の特徴を高次元で両立させたSKYACTIVVEHICLE ARCHITECTUREについて,代表的な衝突形態である前面衝突,側面衝突,後面衝突,歩行者保護から紹介する。をかわしながら,トンネル前側と#3クロスをレインで前後方向に繋ぐ構造を採用した(Fig. 3)。これにより,前面衝突と側面衝突で必要となる車体強度の確保を実現した。

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