マツダ技報 2021 No.38
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―64―2.2 フリースタイルドアと前面衝突性能の両立 スモールオーバーラップ前面衝突では,Aピラーが上方に持ち上げられる方向に大荷重が入り,通常はAピラーの曲げ強度とBピラーによる下方向への引張力で,この変形を抑制している(Fig. 7)。MX30ではBピラーがないフリースタイルドアを採用しているため,Aピラーに1500MPa級のホットスタンプ鋼板を採用し曲げ強度を上げた(Fig. 8)。更に,リアドアラッチをドア開口部の上下に設定し,ラッチレインに590MPa級や440MPa級のハイテン材を採用して結合強度を上げ,リアドア内には高強度のレインを設定し,Aピラーを下方向へ引っ張る機能をもたせた(Fig. 8,9)。Fig. 7 Load Path for Small Overlap Frontal Crash of Fig. 8 Apillar and Rear Door Latch of MX30Fig. 9 Door Strikers and Latches Spec3.1 フリースタイルドアと側面衝突性能の両立 MX30が採用したフリースタイルドアは,側面衝突時の衝突エネルギーを受け止める最重要骨格であるBピラーが存在せず,リアドアを上下のラッチで締結する構造になる(Fig. 8,9)。このような条件下で従来車と同様に乗員を守るためには,ドア変形を最小限に抑えて,ラッチの破断を防止することが必要となる。その対応として,リアドアにBピラー相当の機能をもたせ,リアドアと車体をラップさせることでラッチへの入力を抑3. 側突衝突性能開発MAZDA3Fig. 10 Load-Path for Side CrashFig. 11 Vertical ReinforcementFig. 12 Sidesill StructureえつつBピラーをもつ車両と同じように車体に広く荷重を分散させることができる構造の開発に取り組んだ(Fig.10)。 まず,衝突荷重をドアから車体へ伝達させるために1500MPa級のホットスタンプ材の骨格をリアドア内部に設定した。稜線部に追加レインを設定することで,応力集中部を効率的に補強した(Fig. 11)。そしてこの骨格を支持するラッチ&ストライカーには従来車より高い強度レベルをもつ構造を採用することで,ラッチ入力の許容量を上げる対応を取った(Fig. 9)。 また,ラッチのみに入力が集中するのを避けるため,3つの構造を採用した。1つ目にドアからサイドシルへ上下方向の荷重を伝達するロアラッチ横のキャッチャーピン構造を採用,2つ目にリアドアを受け止め,室内側に荷重を伝達させるためサイドシル上部に補強構造を設定,最後にリアドアへの荷重を抑制するためフロントドアの荷重をサイドシルへ直接荷重伝達できる位置にインパクトバーを設置した(Fig. 12)。 これらの構造でドアと車体の広範囲で衝突エネルギーを受け止められる車両構造を実現した(Fig. 13)。

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