マツダ技報 2021 No.38
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 MX30では,フリースタイルドアであっても従来車と同様に,時速80km/hで車幅の70%に可動バリアが追突する衝突モードでもキャビンの変形を抑え,衝突後もドアを開扉できるようにする必要がある。そのために,MAZDA3で採用した高効率に衝突エネルギーを吸収させるリアフレーム構造を踏襲しつつ,EVモデルにのみ搭載されるバッテリーパックの土台であるロアケースを活用して,荷室空間で高効率に衝突エネルギーを吸収できる構造の開発に取り組んだ。 MAZDA3を踏襲したリアフレームは,衝突時に蛇腹変形させることで高効率にエネルギーを吸収させるが,意図した変形挙動とするため,MX30に合わせて変形の起点となるビードや穴の位置,リアフレームに締結される周辺部品のレイアウトや締結位置を見直した。見直しに際しては,リアフレームの成型過程で生じる板厚変化や加工硬化を考慮した高精度CAE技術を用いた。 またリアフレームは,衝突後半のキックアップの持ち上がり挙動により潰れ荷重が低下する傾向がある。そこで,バッテリーパックを保護するため頑丈に作られたロアケースの後ろ側支持構造をNo.4クロスメンバーに取り付けることで,この持ち上がり挙動を抑制し(Fig. 17),潰れ荷重の低下を抑えた。これにより専用の部品を追加すること無く,エネルギー吸収量をMAZDA3比約10%向上させている(Fig. 18)。 MX30は,ボンネットフードが高い車両で,歩行者との衝突事故の際には,頭部がボンネットフード前側上部―65―4. 後面衝突性能開発5. 歩行者保護性能開発Fig. 13 Side Crash3.2 EV化に伴う火災防止対応 MX30ではフロア下にバッテリーパックを配置しており,ポール側面衝突のような大荷重が車両に加わる衝突において,バッテリーパックに加わる衝撃力で火災に至らないようにする必要がある。その対応としてマルチロードパスの考えを元に荷重分散させ,ショートストロークで衝突エネルギーを吸収することでバッテリー搭載空間への入力を最小限に抑えバッテリーパックを保護する構造の開発に取り組んだ(Fig. 14)。Fig. 14 Load-Path for Side Pole CrashFig. 15 Battery Protection StructureFig. 16 Side Pole CrashFig. 18 Energy Absorbing Performance of Rear FrameFig. 17 Crash Behavior of Rear Frame 具体的な構造としてはバッテリーのエリアを守るためストレートなクロスメンバーをフロアに並列に配置し,かつバッテリーパックの土台であるロアケース内にも側面からの入力に耐えるためメンバー構造を織り込んだ(Fig. 15)。 これらの対応により側面衝突に対しても車体とバッテリーケースで前後・上下に荷重を分散させる車体構造を実現させた(Fig. 16)。

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