マツダ技報 2021 No.38
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(1)応力値の抑制 成形時に発生する応力はFig. 8に示す外郭コーナー曲率(R)・フランジ長さ(L)・成形深さ(D)に起因することがこれまでの活動から分かってきた。―69―A A Fig. 5 Stress Distribution of Structure (Cam, Pad)2.4 デザイン面品質の等価性確保 デザイン面品質を保証するために大きな課題であったのが,開口コーナー部(Fig. 6のA部)に発生する外板面ひずみ(以下ひずみ)である。ひずみはパネルに光を反射させ,Fig. 6(a)に示すデザイン面データに対する乱れのあり・なしを評価する。Fig. 6(b)は成形シミュレーションを使って成形後の面位置を再現し,光を反射させた図である。Fig. 6 Reflection of Light (Before Taking Measures) 開口の成形過程でパネル内部に発生する応力が駆動力となり,デザイン面を変形させひずみとなる。また,成形完了後の変形が局部的になるほど大きなひずみとして認識される。従来工法は絞る工程と曲げる工程の2工程でひずみの起因となる応力を抑制しているが,MX30の工法は曲げる工程のみで応力を抑制する必要がある。しかし,曲げる工程だけでは抑制が難しく,適正値を超える応力が発生する(Fig. 7)。(1)成形過程で適正な応力値内にすることと,(2)成形完了後に内板部の広範囲で均等に応力を分布させることで局所的な変形を抑制する,という考え方の基,製品形状工夫による対策を講じた。Fig. 7 Panel Minor Stress (GPa)Fig. 9 Changes of Production & Residual StressFig. 8 Part NameCam (a)Original Design NGOKNGPad (b)Before Measures Design Before MeasuresStress is Local Stress is Disturbance Curvature of Corner(R) Inner Face Length of Flange(L) (a)Before Measures (b)After Measures Design Face Depth(D) Ridge  適正な応力値内にするためには成形量を減らすことが有効であり,フランジ長さ・深さの最小化,開口の外郭ラインのコーナー部曲率の拡大が必要だった。また,マツダ量産モデル初の給電口採用にあたり,シール性能や組付け性等の課題もあり,開発・デザイン部門とともに細部に至るまですり合わせを行うことで,製品形状を造り込み,適正な応力値に近づけた。(2)変形の抑制 従来は(1)の取り組みでデザイン面品質保証することができていた。しかし,MX30の工法では適正な応力値内まで至れなかった。そこで,新しいアプローチとして成形完了後の応力分布に着目した局所的な変形の抑制に取り組んだ。 デザイン面の変形を抑制するためには,成形完了後の変形を内板面(Fig. 8のA部)の中で留めることが重要である。従来の製品形状はフランジ面からデザイン面の間で稜線が1本しか通っておらず剛性が低い。そのため,コーナー部のように成形過程で発生する応力が高い部位では,成形完了後に局所的な変形を発生させてしまう。そこで,コーナーからストレート部にかけて稜線を追加し剛性を付与した。それにより,Fig. 9(b)に示すよう内板部における成形完了後の応力分布を広範囲で均等にし,局所的な変形を抑制した。

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