マツダ技報 2021 No.38
78/197

(4)精度変化要因調査 精度を決める要具(治具)・部品・加工の因子を切り分けて精度変化検証計画をつくり実施した。要具については事前に可搬式3次元測定器を用い,ねらいの精度となっていることは確認済みのため,沿い面精度・加工について重点的に調査を行った。精度変化が最も大きいフロントボディー前方を定点測定箇所とし,スポット溶接1打点ごとに計測を行った。UR工程は4工程あるが,そのうちの1工程の計測結果をFig. 18に示す。Fig. 18から分かるように,スポット溶接の11打点目より精度変化が発生している。(3)実機検証 事前評価で決めた各良品条件を,試作段階以降の現物で検証するプロセスをつくり,項目ごとに実機検証を繰り返した(Fig. 17)。工程ごとに,良品条件が再現されていることを確認し,加工後の精度測定を実施した結果,―71― ]mm tnemecapsiD[l789562341b→a a→b -0.9910111213141516171819202122-0.67-0.65-0.77-0.98-1.01-1-0.99-1-1-1-1.05-1.04-0.54-0.55-0.49-0.64-0.66-0.64-0.65-0.65-0.62UT工程ではマイルドハイブリッド車・BEVのPFともねらいの精度を達成できていることが確認できた。しかしながら,UR工程においてBEVのPFのみ溶接加工による精度変化が生じた。変化が生じた部位はPF前方に位置するフロントボディーと呼ばれる構成単位で,車両上方へ変位する挙動を示した。フロントボディーは外観品質に大きく寄与する部位のため重点管理していたのだが,車体組立の途中工程におけるPFの構造差による精度影響が当初の想定より大きかった。そのため,BEVのPF構造における良品条件の見直しに向け,UR工程における精度変化の要因追求に取り組んだ。Fig. 18 Displacement Amount per Welding Point 11打点目はFig. 19に示すフロアレインフォースメントと呼ばれる部品とボディーの骨格となるフレームとを溶接している打点である。残りの3工程においても,フロアレインフォースメントに関係する打点で精度変化が確認できた。Fig. 15 Parts Condition and Spot Welding PointFig. 16 Verification Result of Welding SequenceFig. 17 Verification ProcessSill-Side_IN a b Deviation (mm) 1.210.80.60.40.20-0.2-0.4-0.6-0.8-1-1.2 Out In UT Process M Hybrid PF Equivalent BEV PF RHLHWelding Point for Floor Reinforcement UR Process M Hybrid PF BEV PF が多い。そのため,共通部分の精度を活かし新規部分の精度ねらい値・工程要件を決めることから着手した。以降,新規部品の精度ねらい値や工程要件の決め方をフロントフロアのサイドシル部を事例として説明する。Fig.15に示すサイドシルインナーが新規部分で,それ以外が共通部分である。新規部品の沿い面ねらい値や打点順序を設定するために,共通部品の形状データをCAEに入力した。また,部品位置決め・拘束条件については事前構想に基づいた設定とした。変数は,Fig. 15◎a, b図示のスポット溶接順序と新設部品であるサイドシルインナーの精度とし,CAEでの寸法精度評価を行った結果をFig. 16に示す。Fig. 16に示した偏差のカラーマップからも分かるように,下のb打点を先に加工した方が0.5mmほどサイドシル上部のフランジ面精度が良い結果となった。メカニズムとして,微小な沿い面精度差と断面形状の重心位置によって差が生まれることを突き止め,同構造部全てへ対策を展開した。次に新設部品であるサイドシルインナーの精度ねらい値を決めた。このように,精度品質の注力部位を検証し,マイルドハイブリッド車のPF良品条件(溶接順序・部品精度等)を設定した。BEVのPFも同様に,これまで設定したマイルドハイブリッド車の PF良品条件(主に部品精度ねらい値)をInputとして,部品精度ねらい値・打点順序・加工時の保持位置などの良品条件を決めた。

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る