マツダ技報 2021 No.38
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―1―Takeji KojimaRobust Monotsukuri Against Changes in the Industry 今号でマツダ技報も38号となり,1983年創刊以来継続できているのは,これまでの諸先輩方の今まで積み上げてきた努力と資産が連綿とつながってきた証と考える。マツダも2020年で創立100周年を迎え,既に新たな100年に向け踏み出している。先人への感謝と共に,我々の理想や夢の実現に向け,モノ造りのクリエイティビティをモチベーションとして,変革の努力を続けて行きたいと考えている。 一方で,自動車産業は100年に一度の変化に直面し,我々はその大きな変化への対応が必要な状況にある。各国政府は2050~2060年でのカーボンニュートラル化を宣言し,自動車はWell-to-Wheelでの走行段階や燃料製造段階のCO2排出量をゼロにするだけでなく,LCA(Life Cycle Assessment)による製造や輸送も含めたCO2排出量をゼロにすることが求められている。このCO2削減に貢献する電動化の加速も待ったなしであり,各国の温室効果ガス削減に向けて,環境規制の強化も加速度的に高まり,2025年や2035年までに内燃機関のみの車両の販売を禁止する政策を掲げる国々も増加している。この電動化に加え,自動車に新しい価値を生み出す自動運転,コネクティビティ,MaaSを含めた CASE技術への対応,技術の確保も遅れが許されない。加えて,IT企業や新興勢力の自動車産業への参入により,顧客への新たな価値提供,モノ造りのスピードなど,今までの自動車産業の「あたりまえ」の考え方を破壊しており,これらの動きにどのように対峙していくかで,企業としての生き残りがかかってくると考える。 さらに,2019年末から広がった感染症により,人々の行動は制限され,生活に大きな変化をもたらした。自動車産業にとっても,サプライチェーンの分断による部品供給課題から,同時にサプライチェーンの強靭化も求められてくる。 マツダのような自動車産業の中で比較的規模の小さなスモールプレイヤーにとっては,大きな変化の渦に飲み込まれず,我々の理想や夢を大事にしながら,将来の変化に柔軟に対応できるモノ造りが求められている。 その対応について正解は無いが,5つの視点での取り組みが重要と考えている。 1点目は,モノ造りにおける他との区別化,生き残るために独自性を保ち,自分たちが守り続ける「お客様に感じて頂きたい価値の先鋭化」である。昨今,EVや自動運転技術を市場導入することを目的化する論評を多く見るが,技術は目的を実現するための手段であり,何のためにその技術を使うのかといった目的が重視されるべきである。マツダでは,コーポレートビジョンやサステナブルZoom-Zoom宣言2030に示されるように,「カーライフを通じて人生の輝きを提供」,「クルマの持つ価値により人々の心を元気にする」を常務執行役員小島 岳二変化に強靭なモノ造りに向けて巻頭言

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