マツダ技報 2021 No.38
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―75―Fig. 4 Solvent Evaporate Simulation3.2 省エネ塗装機 一般的な塗装システムでは,エアー式スプレーガンや回転式静電ベル塗装機などにより塗料を粒子化して空中を輸送し,塗装面に塗着させる方式が用いられている。通常,自動車ボディーのような大きな面積のワークを限られた一定時間内で塗装する必要があり,更に塗装機とボディーとの相対的な位置関係のバラツキの影響を吸収するために,スプレーパターンの大きい塗装機を使用しているが,MX30の3トーンのような狭い面積の塗装範囲に対しては,非塗装面にはみ出して付着したり(Fig. 5 (a)),空中輸送中に塗装面から大きく外れて非塗装面や付帯設備に付着したりするといういわゆるオーバースプレー(以下,O/S)が発生してしまい,材料ロスとなる(Fig. 5(b))。Fig. 5 Material LossFig. 6 Over Spray By Turbulence FlowFig. 7 Color Change ProcessApplicator Spray pattern Spray out Paint area Non paint area Before After (a) Over spray Paint area (b) Wet DryExisting applicator (a)(b) Air hose Paint hose Spray Color-A Flushing Not required New applicator Booth air Applicator air Rebound air Spray Color-B ション(Fig. 4)によって検証した上で,塗装条件の決定や塗装ロボットのプログラミングを行った。これによって,塗膜として保証すべき品質を確保しながら硬化エネルギーを削減できた。 従って,➀細かい部分の塗装に適したスプレーパターンの小さい塗装機の実用化と➁O/Sの最少化を課題ととらえ,以下に取り組んだ。 まず,➀に対して,エアー使用量を最少化できる新たな塗装機の量産適用に挑戦し,先述のシミュレーションを活用しながら塗装面からはみ出す面積を最小化した。また,➁に対して,スプレー塗装する際のエアー使用量をいかに少なく抑えるかがポイントとなった。今回採用した塗装機は塗料を粒子化し,塗装面へ付着させるために,エアーを使用しているが,その使用量が多くなると,塗装面に当たり跳ね返ったエアーやブース内の気流などによりエアーの流れに乱れが発生し,それによりO/Sが増加する。今回,塗装機とボディーとの相対位置のバラツキを設備によって小さくする事で,小さなスプレーパターンを適用することができた。これによりエアーの使用量を最少化し,従来よりもO/Sの少ない塗り方を実現できた(Fig. 6)。 また,通常の塗装ラインでは1つの塗装機に対し,異なる塗色の塗料供給装置を設け,複数の塗色を塗装する。この際,1つの色を使い終えるごとに溶剤で経路内を洗浄した後で,異なる塗料を充填する色替えを実施する。この際,経路内から押し出して捨てる塗料やそのために使用する溶剤も大きな材料ロスである(Fig. 7(a))。 そこで,塗装機に付随する塗料ホースやエアホースなどをコンパクトに配置し,塗色ごとに塗装機を設けることによって,色替えを廃止し,材料ロスを大幅に削減できた(Fig. 7(b))。 このように,ロスとなっている塗料や溶剤は廃棄または回収して一部再利用されるが,塗料や溶剤の製造には多くのエネルギーが必要であり,ライフサイクルアセスメントの観点においてもエネルギーを削減できた。3.3 省エネ塗装ブース 塗装ブースの機能は,大きく3つあり,1つ目は,労働安全衛生法に基づく省令である有機溶剤中毒予防規則に則り,安全な作業環境を確保するため,塗装ブース内の換気することである。2つ目は,塗膜の中に含まれる溶

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