マツダ技報 2021 No.38
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―76―Fig. 9 Air Supply In 3-Tone Process(Side View)(a)General Spray Booth (b)MX-30 3-Tone Spray Booth Air supply fan unit Spray booth Air supply fan unit Spray booth Air flow Water flow Outside air Air outlet Exhaust fan Outside air Air outlet Exhaust fan (a)General Topcoat Process (b)MX-30 3-Tone Process Preparation Preparation Body transportation : Continuous Body transportation : Stop&Go Basecoat Clearcoat Basecoat Clearcoat Settiing Settiing Air-seal Air-seal Air flow Pump Dry filter Fig. 8 Spray Booth(Front View)Pump Shutter 剤分の揮発速度を一定に保つため,塗装ブース内の空気温度を一定に制御することである。3つ目は,排気に含まれる有機溶剤分を外部に排出せずに回収することである。 一般的な塗装ブースでは,上記1つ目と2つ目を満足するために,天井から温度制御した空気を供給して,塗装できる環境を作るとともに,床から排気することで,一定速の下降気流を作り出し,塗装ブース全体の換気を行っている。また,ボディー全体の塗装を前提として設計されており,3トーン塗装のように特定部位のみを塗装する場合には,多くのエネルギーがロスとなる上に,塗分け回数に応じて,複数回塗装ブースを通過させなければならないことから,それに応じてロスが増大する。 更に,3つ目を満足するために,ブース下部を循環させている水流に排気を接触させることで,排気中に含まれている有機溶剤分を回収する方法が用いられている。このように水流循環させる湿式回収方式では,水流を作り出すために複数の大揚程ポンプを回さなければならず,多くのエネルギーが必要になる。また,循環水に含まれる有害物質を無害化する排水処理にも多くのエネルギーが必要である(Fig. 8(a))。 従って,➀塗装ブースにおける必要空気量の削減と➁O/S削減を課題ととらえて以下の取り組みを行った。 ➀に対する施策として,ボディーを各工程に一時停止させるシャトル搬送形式を採用し,ベース塗装・クリア塗装・セッチングといった各工程に必要な作業時間をそれぞれ一か所で確保するライン設計を行った。これにより塗装ブース長を短縮することで,必要空気量を大幅に低減した。 加えて,工程間にシャッターを導入し,シャトル搬送と同期動作させて,ボディー搬送時のみ開閉動作する方式を採用した。これにより,ブース内空調と外気との接触時間を最小限に抑え,ブース内温度の変化を抑制することで,空気の温度を安定に維持するための加温や冷却にかかるエネルギーを削減した。 更に,シャッターによる間仕切りを活かし,ゾーンごとに給気風量の個別コントロールを適用した。一般的に自動車製造ラインにおける塗装ブースには大きく分けて4ゾーンあり,塗装前のボディーのワイピングなどの作業を行う『準備』,実際にボディーに塗膜を付与する『塗装』,塗装後に塗膜中の溶剤を揮発させながら塗膜を安定化させる『セッチング』,乾燥炉からの熱気を遮断する『エアシール』の構成になっている。しかしながら各ゾーンの必要風量は,機能上同一ではなく,全てのゾーンを同じ風量で運転することは大きなロスとなる。今回は各ゾーンに間仕切りを設けることで各工程に機能上必要な風量のみを供給し,全体として作動空気量を削減した(Fig. 9)。 また,➁に対する施策として,O/Sの回収を乾式フィルターで捕捉する方式とした。今回の3トーン塗装工程では,3.2のようにO/Sを削減できたため,乾式フィルターで十分に有機溶剤分を捕集でき,湿式溶剤回収システムの運転にかかっていたエネルギーを全て削減することができた(Fig. 8(b))。

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