マツダ技報 2021 No.38
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―80―2. 装置の紹介Fig. 1 R360 Coupe Manual Driving DeviceTable 1 Scenes and DevicesSceneDrivingRing type acceleratorPush type brake・Elbow padRear electric doorLoadingLightweight wheelchairAttachmentBoardingAccess board2.1 リング式アクセル 市場には片手でハンドル操作をするさまざまな手動運転装置が存在するが,今回は両手での運転操作頻度を高めることができるリング式を採用した(Fig. 2)。両手で運転することは,ハンドル操作性や上半身の姿勢保持性の向上,サンバイザーの操作やドリンクを飲むことが運転中に可能になる等の利点があると考えている。 リング式アクセルは,ハンドルの内側にリングを設け,これを親指もしくは母指球で押し込むことで加速する構造である(Fig. 3)。通常,ハンドルを握る際に親指と母指球は大きく寄与しない。すなわち,押し込み方式を採用することでアクセル操作とハンドルをしっかり握ることの両立を可能とした(Fig. 4)。Fig. 2 Ring Type Accelerator DeviceFig. 3 Pushing Operation ImageGrip handleFig. 4 Pressure Distribution ImageAccelerator operationPressure togrip the handlehighHighHighlowLowDevice進めた。各シーンに共通する開発思想は以下3点である。・安全安心である。・使いやすさを極めるために,人間中心で考える。・低価格で提供する,個人の能力を発揮していただくために,過剰な支援は避ける。 なお,ベース車両はMX30を選択した。これはMX30のコンセプト「私らしく生きる」とSelf-empowerment Driving Vehicleの目指す姿が合致すること,及びMX30の特徴であるフリースタイルドアの開口の広さを活用し,服を汚さずスマートで筋負担の少ない車いすの積み込み方式を新たに提案できる可能性があると考えたためである。(詳細は2.3で記載) 各シーンとそれを支援する装置の関係は以下である。次章で装置ごとに具体的に説明する(Table 1)。 また,リングはハンドルと同心円となるようにレイアウト設計した。これにより,ハンドルを持ち替えて違う場所を握ってもハンドルから同じ位置感覚にリングがあるため直前の押し込み量を再現しやすくなることと,仮にリングがない場所を握ったとしてもハンドル形状を頼りにリングを直ぐに探せることに配慮している。なお,リング式アクセルはMX30本来のエアバック性能,メーターの視認性を阻害することのないようレイアウト設計されている。 また,リング式アクセルと通常のフットペダルアクセルは容易に切り替えが可能となっている。これにより,旅行などで遠出をするようなシーンでは家族や友人と容易に運転を代わりながら同じクルマで一緒にドライブを楽しむことができる(Fig. 5)。

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