マツダ技報 2021 No.38
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―82―2.3 リア電動ドア 車いすの積み込みは,フリースタイルドア(Bピラーレス)の特徴を活かし,運転席のシートを倒しお腹の上を通す一般的な積み込み方式ではなく,運転席後ろの開口部を通すことで服を汚さずに積み込める新たな方式を提案している(Fig.10)。Fig. 10 Loading ImageFig. 11 Operation Switch Layout(2 places)2.4 軽量車いす 2.3節で前述した積み込み方式であっても,片手で車いすを持ち上げる点,ドア開口やシートを避けなければならない点は一般的な方式と同様であり,車いす利用者にとって身体的負担が十分に小さいとは言い難い。この負担の一番の要因は,車いすの重量にある。更に,積み込みに要する時間の長さも負担が増加する一因となっている。そこで,車両という限られたスペースに素早く積み込むため,軽量,かつコンパクトに畳める車いすを新たに開発し,積み込み時の負担を軽減することを目指した。 軽量化を実現するために,車体骨格構造の徹底したシンプル化と,CFRPへの材料置換に取り組んだ。更に,シート部(座面と背もたれ)を着脱式とし,そのフレームを車体の剛性部材として機能させることで,1ユニットの重量が3.5kg以下,すなわち女性が片手でも楽に持ち上げられる軽さを実現すると同時に,車体部をコンパクトに折り畳むことを可能とした(Fig. 12)。2.5 アタッチメント 2.4節で前述した車いすを,2.3節で前述した積み込み方式で後席上に積み込むにあたり,以下の3つを目的としてアタッチメントを開発した。・車いすを,楽に,素早く安全に積み込むためのサポート・積み込み後の車いすによるリアシートの汚れ防止・走行中の車いすのガタつき/飛び出しの抑制アタッチメントの構成要素は4つであり,各機能は次のとおりである。➀車いす車体部の車内への誘導と走行中の保持を担うフレーム,➁車いすの前輪の保持と定位置への格納の目視確認ができるキャスタートレー,➂リアシートの汚れを防止するシートカバー,➃車いすシート部の後席足元へのスムーズな出し入れと走行中の保持を担うシートトレー(Fig. 13)。また,後席乗員数が増えた場合にアタッチメントを素早く取外せるよう,車両への固定は,着脱が容易なISO FIXラッチコネクターを活用している。2.6 アクセスボード 車いすからクルマへの乗り込みを支援する装置は,ボード式,回転式,リフトアップ式等が市場に存在するFig. 12 Lightweight WheelchairFig. 13 AttachmentSeat cover Caster tray Divided into seat and bodyThe body is foldableLoading into the carFlameSeat tray この際,車内からリアドアの開閉をする必要があるが,小柄な方だと手が届かない可能性がある。これに対処するためにリアドアを電動化した。スイッチは車内からでも外からでも操作できるよう2箇所に設置した。また,挟まれる危険を回避するためにドアを閉じる操作と閉じ切る操作の2段階方式を採用した(Fig. 11)。

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