マツダ技報 2021 No.38
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―2―掲げており,2012年の新世代商品であるCX5導入以降,ドライビングポジションやペダルレイアウト等,「人間中心」の開発哲学に基づき技術を進化させ続けている。現在では,メディアなどの外部のステークホルダーの皆様からもマツダ車の価値として認めていただいていると認識しており,更に進化させるべき価値と考えている。 2点目は,「将来予測と対応戦略の共有化」である。将来予測は,不確実なもので,時として自分たちにとって不都合な将来が予測されることもある。それらを正しく認識したうえで,正しく解釈し,受け止め,1点目で示した「独自の価値」を守りながら,どのように対峙していくのか,自分たちなりの中長期の戦略が必要である。その戦略に基づき人・モノ・金のリソースを準備していく。加えて,その戦略の目的・意図を開発メンバー全員に理解・浸透させ,進むべき方向性を一致させることが開発の原動力になると考える。 3点目は,戦略実行に向けた,「資産の活用」である。スモールプレイヤーとして限られたリソースでは一足飛びに理想とする技術を手にすることが出来ないことが多い。理想という城を築城するために,その土台となるブロックを完成させ,それをひとつひとつ積み上げていく。さらにその資産を活かし,次なる進化のブロックを継続的に積み上げる,マツダならではの技術革新とプロセス革新の考え方と言える。電動化技術や安全技術の進化,MBD/MBR(Model Based Development/Model Based Research)の進化,モノ造り革新の進化など,いままでの資産を活用して技術革新を遂げてきた実績であり,これらの自分たちが獲得した資産を理解し,活用することが必須である。 4点目は,「協業」である。特に,CASE技術の獲得など,今までの社内資産の活用で対応できない新領域や新技術の獲得には,外部との協業が欠かせない。自動車業界のみならず業界を超えた協業が必要である。マツダは過去から志を同じくする皆様と協業を進めて来ているが,必要な取り組み姿勢は,「共に学び,共に汗をかき,Win-Winな関係を築く」ことである。これは必ず忘れてはならない。 日頃からマツダを支えて頂いている地場のサプライヤー様や地元の企業や自治体の皆様も「協業仲間」であり,この姿勢を守りながら,より一層高いハードルであるカーボンニュートラル化への取り組みは,地域が一緒になって進めて行きたいと考える。 5点目は,「発想の転換」である。先の読めない将来の変化の中,今後も多くの要求・要請に対峙することになる。特にカーボンニュートラル化は,サプライチェーンを含めたLCAでのCO2削減と経済成長を両立させなければ達成できないハードルであり,考え方や取り組みにブレークスルーが必要である。より高いハードルに挑戦していくために,視点や視野を広げると共に,発想や意識を変え,「やらなければいけない」という負の側面を,「理想を実現する」という正のスパイラルに転換させ,前向きに課題に対峙していく思考が必要と考える。 最後に,今号に寄稿された皆様に深く感謝したい。今号では,マツダの新しいページを開く,マツダ初の量産EVであるMX30を特集する。MX30は,MAZDA3,CX30から始まったマルチソリューションプラットホームのスモール車種群の集大成にあたり,人間中心の考え方を極めると共に,多くのコト創りにも挑戦している。当技報でその内容を理解し,是非とも実車でその価値を体感頂きたい。

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