マツダ技報 2021 No.38
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―83―2.7 デザイン 本開発にあたり,上記装置を搭載したとしてもMX30が本来もつ世界観を阻害することなく,インテリアデザインをお客様に楽しんでいただきたいと考えた。そこで全ての装置はMX30のインテリアのこだわりである「空間の抜けを感じさせるパーツや,自然な風合いの素材にこだわり,開放感と安心感に包まれる空間」に調和した形状,材質,色調とした(Fig. 17)。3. 将来に向けた乗降を支援する技術開発 最後に,クルマへの乗降を支援するための取り組みとして自動バレーパーキングシステムの開発を紹介する。車いす利用者にとって駐車や乗り降りのシーンにはさまざまな障害が存在しており,自由な移動の妨げになっていることが「1.はじめに」に記載したヒアリングで分かった。例えば駐車スペースが狭く乗り降りができない,専用駐車スペースにパイロンが置いてあり乗り降りを2度繰り返す必要がある,電気自動車の場合は急速充電口に近づくだけの十分なスペースが確保できない,広い駐車スペースを見つけることができたが目的地まで遠い等の事象が挙げられる。これらを少しでも解決するために自動バレーパーキングシステムの開発に取り組んだ。バレーパーキングとは一般的に駐車を係員にお任せできるサービスのことをいう。自動運転技術を活用することで,クルマが自動運転で広い場所に迎えに来る,もしくは広い場所で降りて指定の駐車場に停車してくれることを実現し,そもそも駐車する行為からお客様を解放することで上記障害を回避しようとしたのが自動バレーパーキングシステムである。自動バレーパーキングシステムは大きく4つの技術で構成されている。(1) 危険を認知判断し回避する技術 超音波センサーを用いて周囲の障害物(距離・方位)を検出し,危険を察知すると自動で停車し衝突を回避する(Fig. 18)。Fig. 14 Device ComparisonFig. 15 Access BoardFig. 16 Folding StructureFig. 17 Design ImageNew Access boardArea for put the handArea for put the buttocksBoard typeAppropriateDegree of supportTimeShortFoot trajectoryConventional productRoll seat type Liftupseat typeExcessLongExcessLongが,両腕をある程度動かすことのできるお客様を想定した場合,支援の程度が過剰でなく,乗り込みに要する時間が最短となるボード式を採用した(Fig. 14)。 アクセスボードを用いた乗り込み手順を示す。➀片方の手をアクセスボードに突き,もう片方の手は車いすアームレストもしくはフレームに突いた状態でお尻を持ち上げる。➁手を突いているアクセスボード上に移動しお尻を預ける。➂上半身,お尻を車内に入れ,➃車両シート上のお尻を中心に回転し足を車内に入れて乗り込み完了となる。この一連の動きを考慮し,アクセスボード形状に求められる要件は,お尻と手が同時にしっかりと付ける面積を確保しつつ,足入れ軌跡の邪魔にならないことと定義し,これらを満足する形状を採用した。高さについても,車いす・車両シートの地上高を踏まえ,安全かつ楽に乗り込めることに配慮し設計した(Fig. 15)。 なお,ドアトリムとの干渉を防ぐために取り外し不要な折り畳み構造を採用している。また,折りたたむ際にはサイドエアバックの性能を阻害しないよう,前方向にワンプッシュで折りたためる構造を採用した(Fig. 16)。

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