マツダ技報 2021 No.38
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―88―Fig. 4 Swirl Control ValveFig. 5 Comparison of Piston Shape4.2 新燃焼技術を活用した燃費改善 まずは先述した斜め渦燃焼による機能➀(燃焼急峻化)を活用した燃費改善技術を説明する。これまでの開発経験において,EGR量を増加させることによって,ポンプロスを低減でき,燃費を改善できる一方で,燃焼速度の低下による燃焼安定性,及び排気損失の悪化が課題となっていた。これに対して,Fig. 3で示したとおり,新型エンジンでは流動形態を刷新し,圧縮行程後半まで渦中心を斜めに傾けた状態を維持させることにより,点火時においても燃焼室中央部の点火プラグ周辺に強い流動を配置することができ,初期燃焼から急峻化させることができている。これにより燃焼速度が向上し,これまでの開発課題となっていたEGR導入によるポンプロス改善と燃焼速度悪化のトレードオフをブレークスルーすることができた(Fig. 6)。Fig. 6 Heat Release and Pumping LossFig. 7 Cooled EGR SystemFig. 8 Fuel Consumption Map4.3 新燃焼技術を活用したPM/PN改善 次に,斜め渦燃焼による機能➁(混合気制御性の向上)を活用したエミッション改善技術について説明する。ガソリンエンジンでは,触媒の早期暖気を行うため,冷間始動直後に点火タイミングを膨張行程まで大幅にリタードし,排気ガス温度を上昇させる必要がある。その結果,点火タイミングにおける燃焼室内の温度低下により着火性が悪化するため,点火プラグ周辺に着火性の良い濃い混合気を集める(成層する)必要がある。従来エンジンでは,圧縮工程後半にピストンに噴霧を衝突させることによって,燃料をプラグ周辺に輸送(Wall Guide)していた。しかし,その際にピストン頂面に生じる燃料液膜が,PNの発生要因となっており,トータル排出の大部分を占めていた。そのため,新型エンジンではWall Guide成層方式を廃止し,先述した新たな流動形態を活用したAir Guide成層方式を採用している。Fig. 9にAir Guide成層方式の模式図を示す。 以降の項目にて,これらの機能を活用した燃費,PN/PM改善技術を紹介する。 また,新燃焼技術によるイネーブラを最大限に活用するため,EGRシステムも刷新した(Fig. 7)。具体的には,流量制御性に優れたバタフライ式EGRバルブを採用することにより,燃焼安定性を損なわない範囲内で限界までEGRを導入することが可能になった。更に,レイアウトの工夫によってEGR経路を最短とすることで,レスポンス性と車両への搭載性も向上している。ユニット単体での,新旧燃費率マップ比較をFig. 8に示す。白枠で示す燃費良好な領域が,SCV,クールドEGRシステム,及びEGRバルブの導入により大きく拡大した。これらによりWLTCモード従来比最大6.8%の車両燃費改善に貢献した。

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