マツダ技報 2021 No.38
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―91―1. はじめにdriving. In order to prevent such fatal accidents involving surrounding people, it is necessary to detect sudden centering on Mazda Co-Pilot Concept, a human-centered autonomous driving technology. As part of this technology, we have been developing a technology that allows the car to take over driving operations when it detects driver’s disability of driving. Here we introduce the technology of earlier detection of driver’s worsened Key words:Human Engineering, Driver Condition, Driver Attention, Driver Modelconditions to prevent accidents.Integrated Control System Development Div.Junichiro KuwaharaYasunori YamamotoMasahito HitosugiShiga University of Medical ScienceKoji IwaseYohei IwashitaDriver’s Viewing Action and Driving Action 平成30年における国内の交通事故死亡者数は3,532人であり,先進安全技術の進歩によってその数は減少傾向にあるが,未だ多く死亡事故が発生している。これら死亡事故の原因は安全運転義務違反等のヒューマンエラーが多くを占めており,脇見やふらつきに対して警報*1~4  統合制御システム開発本部 論文・解説17Early Detection of Deterioration of Driver’s Physical Conditions from 桑原 潤一郎*1岩瀬 耕二*2岩下 洋平*3山本 康典*4一杉 正仁*5要 約 運転中の体調変化による死亡事故は全体の約10%を占めるといわれており,昨今においてもドライバーだけでなく周囲の人を巻き込む凄惨な事故が発生している。このような事故を防止するには,早期にドライバーの体調変化を検知し,ドライバーの早期救命や周辺の二次被害防止に向けた対応が必要である。 マツダでは,人間中心の自動運転技術であるMazda Co-Pilot Concept(普段はドライバーの能力を最大限に発揮することを助け,危険が生じた場合にはクルマがオーバーライドして安全を確保)に基づき,ドライバーの走る歓びや安心・安全を最大化することを目指しており,その一環として,万が一ドライバーが運転できないと判断した場合には自動運転に切り替え,周囲を含めて安全な状態を確保する技術を開発している。本稿では,ドライバーの体調変化による運転機能低下をとらえる技術と今後の展望について紹介する。具体的には,運転機能低下を通常運転からの逸脱として検知するため,通常の視認行動や運転操作を規定するドライバーモデル(以下,モデル)を構築した。また,体調起因の死亡重傷事故の約3割を占める脳卒中を例に,後遺症をもつリハビリ患者及び健常者のドライビングシミュレータ運転データからステアリング操作や視認行動が異なることを明らかにし,体調変化による運転不能前の検知の実現可能性を確認した。今後は実交通環境への適用や検知性能向上のための取り組みを進め,早期商品化を目指す。AbstractAbout 10% of fatal tra■c accidents is caused by the deteriorations of drivers’ physical conditions during changes in driver’s physical conditions at an early stage. We aim to maximize safety as well as driving pleasure, する安全システムの開発等の対応が進んでいる。一方,ドライバーの意思では防ぎようのない運転中の体調急変が全体の約1割を占めると報告されており(1),実際に周囲の人を巻き込む重大な事故が発生している。このような事故を未然に防止するため,国土交通省はドライバーの異常姿勢,閉眼,ハンドル無操作に基づき,体調急変による運転不能状態を検知するドライバー異常時対応シ*5  滋賀医科大学 早期検知技術視認行動と運転操作に基づくドライバー体調急変の

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