マツダ技報 2022 No.39
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―91―3. ボディーの進化Fig. 3 Di■erence of Axial Force and Bending Moment 2つ目は「入力点剛性アップ」である。ボディー全体の剛性を高めるよりも,入力点の剛性を高める方が,エネルギー流入を抑制させる上で効率的であることが分かった。最適な剛性バランスによりエネルギー流入を抑制させるコンセプトとした。 3つ目は「高歪部位への減衰特性付与」である。ボディーに伝わってきた振動/音を発生させる歪みエネルギーをコントロールし,歪みエネルギーが集中した部位に減衰接着剤を設定することで効率的にエネルギーを減衰させるコンセプトとした。 これらのコンセプトにより,まず,「軸で受け途切れないロードパス」に基づき,エネルギーの流れを見ながら全体のフレームワークを決め,骨格が過剰になりすぎないように入力点剛性を高めてエネルギー流入を抑制させ,歪エネルギー分布に基づき減衰接着剤を設定した。3.1 構造化コンセプトに基づいて設計した構造・材料 2.3節で述べた3つの構造化コンセプトに基づいて設計した構造について述べる。(1) 軸で受け途切れないロードパス(弾性,衝突,振 「軸で受けるコンセプト」を車体構造で実現するため,CX60ではさまざまな入力に対して軸で受けるパスを配置した。更に「途切れないロードパス」実現のためにパス同士をスムースに繋ぎ,多方向の環状構造配置(1)とした。これにより,あらゆる方向からの入力に対してロバストに受け止める構造の下地を作った。 しかし,パス同士の結合部でエネルギーロスが生じる。Fig. 2 Energy Flows of Body Shellなパワーとサイズをもった車を,神経の通った手足のように自在に操れる状態が理想である。ボディー領域では,・骨格各部位の剛性値に連続性をもたせることにより,操舵に対して遅れなくボディーを反応させること。・車体微振動の抑制により,人間がボディーの反応を感じ取る際のノイズを小さくすること。すなわちクルマの挙動をクリアに感じ取れるようにすること。が必要である。 また今後展開されるラージ商品群においても,同じコンセプトに基づく車体骨格の基本構造を「固定要素」,車格やデザインにより変えるべき領域を「変動要素」とすることで,共通の価値を提供することをねらいとし,開発を行った。2.2 エネルギー視点での開発 2.1節の3つの価値を実現するためにマツダが考えたキーワードは,ボディーがもつさまざまな機能をエネルギー視点で全体統合する「エネルギーコントロールボディー」である。クルマが使われるさまざまなシーンについて,エネルギーの状態(伝達・流入・吸収・減衰)がどのようになっているか明らかにした。それぞれの価値をエネルギー視点で考えると,・骨格各部位の剛性値の連続性:走行時の弾性エネルギー・衝突安全性能:衝突時の運動エネルギー・乗り心地・静粛性:走行時の振動/音エネルギーをいかにコントロールするのかが重要である。2.3 構造決定へのアプローチ クルマ全体でそれぞれのエネルギーをコントロールする上で,以下3つのポイントに注力した(Fig. 2)。・走行時の弾性エネルギー:フロントサスペンションとリアサスペンションの間を伝わる骨格における剛性値の不連続部を作らず,ロスなく伝達する。・衝突時の運動エネルギー:車両のもつ運動エネルギーを,ボディー骨格部材で吸収する際の効率を追求する。・走行時の振動/音エネルギー:サスペンションからのエネルギー流入を入力点で抑制させてボディーに伝えない。伝わってきた振動/音エネルギーを減衰(熱に変換)させる。 それらを実現するための構造化コンセプトの1つ目は「軸で受け途切れないロードパス」である。例えば,ボディーフレームを模擬したケーススタディにおいて,軸方向に荷重を加えた場合,曲げ方向に荷重を加えた場合に比べ,フレームに発生する歪エネルギーが約50分の1となる。エネルギーを効率よく軸で受け,かつそれを途切れさせないことを,構造検討する上でのコンセプトとした(Fig. 3)。動/音)

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