マツダ技報 2022 No.39
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(2)高エネルギー吸収構造 CX60は限られたスペースの中でより効率的に衝突エネルギーを吸収するために,縦置きエンジンのメリットを生かし,メインロードパスのクラッシュボックス~フロントフレーム~キックアップ~Bフレーム,ロアーロードパスのクラッシュボックス~サスクロスなど,骨格部材を最大限ストレート化することで荷重の伝達率を上げ,質量効率の良い骨格を実現した(Fig. 2)。(3)骨格部材の高強度化 CX60は前突時の客室エリアの変形抑制と軽量化のため,Aピラーからルーフサイドに冷延1470MPa級の超―97―2. 前面衝突性能開発Main LoadpathLower LoadpathUpper LoadpathTunnel SideUpper LoadpathTorqueBOXBFrameUpperFront2.1 Large商品群における前面衝突対応車体技術の進化 前面衝突は,エンジンルームを潰して衝突エネルギーを吸収し,乗員の傷害を軽減するのが一般的だが,CX60は,6気筒エンジンの縦置きパワートレインとショートオーバーハングデザインにおけるクラッシャブルゾーンの確保や,プラグインハイブリッドによる重量増加,高電圧保護など,多くの課題があった。CX60はこれらの課題に対し,マルチロードパスによる荷重分散,高エネルギー吸収構造及び骨格部材の高強度化という3つのブレークスルー技術によって,軽量かつ優れた前面衝突安全性能,そしてCX60のデザインを実現するトップレベルのショートオーバーハング(852mm)を達成している。(1)マルチロードパスによる荷重分散 CX60はあらゆる方向の入力に対して乗員に加わる衝撃を和らげ,客室の変形を最小限にとどめるため,前突時の入力をメイン系列(フロントフレーム)・アッパー系列(エプロン)・ロアー系列(サスクロス部品)の3つのロードパスで効率的にエネルギーを吸収する構造を採用した(Fig. 1)。更にフロントフレームからの入力は,従来のBフレームに加え,トンネルサイドやトルクボックス,アッパーロードパスに伝達するなど,各系列の入力をキャビンの各部材に分散させることで,客室変形を抑え乗員への直接的な被害の軽減を図った。Fig. 1 Multi-Load-Path Structure for Frontal CrashFig. 2 Comparison of Body StructureFig. 3 Mechanism of Straight Frameだ。この進化のポイントは,机上開発の段階において,衝突及び衝突に関連する他性能の進化の構想をエネルギーの状態(伝達・吸収・反射・減衰)で分類し,衝突と同体質なものを統合することで,全体最適・高効率なロードパスを創出・構造化するMBD技術の高精度化と適用拡大である。 新型CX60では,特徴である後輪駆動やエンジン縦置き方式,PHEVの大容量リチウムイオンバッテリーの床下配置などの技術と,MAZDA3(1)で衝突安全性能を大きく進化させた新世代車両構造技術「SKYACTIVVEHICLE ARCHITECTURE」を融合させた。更に,大型化による車両質量の増加への対応として,高強度材料への置換や,車体骨格の結合部強化・断面形状工夫,フレームのストレート化による軸方向への荷重の伝達率向上により,衝突時の荷重を吸収・分散して支える機能を更に進化させた構造で,軽量化と衝突安全性能の向上に取り組んだ。 本稿では,衝突安全性能と新型CX60の特徴を高次元で両立させた「SKYACTIVVEHICLE ARCHITECTURE」の進化について,代表的な衝突形態である前面衝突,側面衝突,後面衝突及び歩行者保護の各観点から紹介する。 また,フロントフレーム部においては,安定的な軸圧縮変形を実現し,エネルギー吸収効率を倍増させながら省スペース化と軽量化を両立させる断面中心のストレート化や,変形周期コントロールの節,フレーム前部と後部で断面構造を変える稜線徐変構造を織り込んだ(Fig. 3)。これにより,CX60はひとつのボディーでICEとPHEVを搭載可能な構造としつつ,高い前面衝突安全性能と軽量化を実現している。

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