―98― Fig. 4 High-Tensile2.2 相手車保護構造の進化 CX60では万が一の車対車衝突時に相手車両も保護する技術として,車両フロント部の発生荷重均質化構造を採用した。相手車保護には,自車と相手車双方のエンジンルーム内におけるエネルギー吸収を最大化することが効果的である(Fig. 5)。 これを実現するために,車両フロント部のサブフレーム前にペリメータービームを新たに設置し,バンパーレインとともにワイド化することで,自車と相手車双方のエネルギー吸収発生機会の最大化を実現した(Fig. 6)。Fig. 5 Maximizing EA in the Two Vehicle’s CollisionFig. 6 Load Homogenization Structure of CX603. 側面衝突性能開発3.1 側面衝突時のバッテリー保護構想 法規(UNR135)や各国NCAPでも採用されている電柱などへの衝突を想定したポール側面衝突時は,車両の局所変形が大きいため,車両搭載のバッテリーパックをポールや潰れ残った車体などに衝突させないことが必要である。特に,車両の中央部は,重心に近いため,高いエネルギー吸収性能が車両に求められる(Fig. 10)。 CX60では,動力源が異なる内燃機関・電気駆動方式(PHEV, Mild Hybrid)のプラットフォームの基本構造を共通とした上で,床下に配置されたPHEVの大容量リチウムイオンバッテリーの衝突安全性能を確保するため,主にサイドシルで衝突エネルギーを吸収する従来の構想から,トンネル部も併せて活用する構想に発展させ,エネルギー吸収量が10%改善した(Fig. 11)。Fig. 7 Conditions for Confirming Load Fig. 8 Deceleration Speed and Deformation in the Other Side Vehicle at the Collision with or without Fig. 9 Comparison of Behavior of Previous and New Structures in Vehicle-to-Vehicle CollisionHomogenization Structural E■ects in Vehicle-to-Vehicle CollisionLoad Homogenization Structure高強度鋼板を,ヒンジピラーとダッシュクロスにはホットスタンプ材をマツダ車として初めて採用し,高強度化を図った(Fig. 4)。これにより,荷重入力に対して客室の変形を最小限にとどめ,乗員傷害の低減に繋げた。また,これらの構造化のために,新たに開発したホットスタンプのスポット溶接強度を高精度で評価できるCAE技術を確立した。 本構造と従来構造にて,車対車衝突(車両幅方向干渉量3水準)で効果確認を実施したところ,相手車における車体減速度は平均10%,車体変形は従来構造よりも30%改善した(Fig. 7, 8)。相手車保護構造の進化により,自車及び相手車のエンジンルーム内におけるエネルギー吸収が増加し,衝突時の相手車に対する自車の進入挙動緩和傾向が確認でき,これが相手車両の車体減速度や車体変形の減少に寄与したと考えられる(Fig. 9)。
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