を1.7m/s2に設定した。これは国内主要4都市の走行データ分布において,ドライバーが一般的に使用する減速度の2σの範囲内であることを確認しており,自車が速やかに減速停止できるとともに,後続車から追突されるリスクを最小限に抑えるねらいがある(Fig. 7)。―113―Fig. 6 Multi Sensor Fusion View5.2 車両制御 DEAは,車両の走行状態,ドライバーの状態によるシステム制御状態,環境認識情報を基に,車両制御モードを決定し,縦横制御を行う。(1)車線維持,路肩に寄せる 車両の横方向制御は,自車の走行経路に基づき,滑らかな車両挙動となるような操舵量を算出し,ステアリング制御を実施している。 ➀両側白線があり,緩やかな道路で車線維持制御を開始し,可能な限り車線内を維持させることで,異常時の運転支援を行っている。DEAでは,車線維持機能などをドライバーが使っていないときでも,車線逸脱抑制制御により,車線逸脱前にステアリングの反力がかかるようにしている。加えて交差点等,車線を維持することで危険になり得るシーンでは,そのシーンの手前で車線維持をキャンセルさせ,縦制御のみを行う。これらの制御をドライバー異常検知後から開始することで,運転不能時の運転支援を行っている。 ➁高速道路または自動車専用道路において第一走行車線や登坂車線など路肩に隣接する車線を60kph以上で走行している場合,可能な範囲で路肩に寄せる機能を作動させる。車線境界線の種類,周辺の交通参加者の有無,走行環境(工事,合流など)を監視し,路肩への移行開始を判断する。路肩に寄せる機能の横移動は,急な車両挙動とならないように制御している。(2)車速制御(アクセル無効化含む),減速制御 車両の縦方向の制御は,自車の走行計画に基づき駆動制御と制動制御を行う。制動制御は,緊急時を除き,後続車両のドライバーの回避性を考慮して,減速度を設定した。 ➀ドライバー異常検知後,減速開始するまで速度抑制を実施し,ドライバーへの注意喚起及び,走行状態を維持する目的でアクセル操作の無効化を行う。また,緊急時に備え,ブレーキプレフィル機能を作動させる。 ➁路肩に寄せる場合は車速を5kph(クリープ相当)まで減速し,速度を維持する。 ➂減速・停車する機能が作動する時の減速度は,後続車に対する追突リスク回避と,早く救護するための減速停車までの時間を両立させることを考慮し,最大減速度Fig. 7 Distribution of Deceleration in Japan ➃路肩に寄せる時に,路上物及び交通参加者を検知した場合は車速維持をキャンセルし,速やかに減速を開始し停車する。(3)停車保持及び救護支援 自車が停車した後は,停車状態を維持するため電動パーキングブレーキ(EPB)を自動的に作動させる。その際,意図せず電動パーキングブレーキ(EPB)が解除しないよう,アクセル操作での解除は無効としている。くわえてエマージェンシーコールによる救助要請と,全席ドアとリフトゲートを自動で解錠することで救助活動を支援する。5.3 ユーザーインターフェース(UI) DEA作動において,影響が及ぶドライバー,同乗者,周囲の交通参加者が適切な行動がとれるよう配慮する必要がある。また,緊急時におけるシステム作動解除の分かりやすさも重要と考え,UIを検討した。(1)ドライバーに対するUI DEAはドライバー状態推定によるドライバー異常検知と,その後のドライバーへの応答確認により,ドライバー異常を確定するシステムである。よって,ドライバー異常を誤って検知した場合への対処として確実にシステムを解除することも必要となる。 ドライバーの運転姿勢やステアリング操作などの運転操作の組み合わせでも解除できる仕組みに加え,確実に解除するための手動解除スイッチが必要と考えた。そこで,非常点滅表示灯が点滅時のドライバー行動を分析し,自然に操作しやすいハザードスイッチを解除スイッチとして選定した。加えて,確実な解除操作を実現するために,ディスプレー上にスイッチの絵を図示し(Fig. 8),その背景を明滅することで誘目性を向上させた。
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