マツダ技報 2022 No.39
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1234567(3)周辺の交通参加者に対するUI DEAは車外への報知により,自車周辺の交通参加者の回避行動に期待するシステムである。つまり交通参加者に対して,緊急事態が発生していることを知らせ,自車に近づかせない行動を促す必要がある。 そのためにドライバー異常検知後に非常点滅表示灯の点滅による報知を開始,異常確定後はこれに加えてホーンの断続吹鳴,制動灯の点滅による報知を行う。 DEA作動後,路肩に寄せる機能が働くときは非常点滅表示灯の点滅から方向指示器の点滅へ切りかえるため,異常の発生していない一般の車と見分けがつかず,緊急事態発生に気付きづらいと考えられる。これにより後方の交通参加者が適切な回避行動をとれないことが懸念されるため,制動灯を点滅させることによって,自車の緊急事態を認知できる仕組みを採用した。(1) 警察庁HP 令和3年中の交通事故死者数について,―114― Fig. 8 Human Interface for Driver6. おわりにhttps://www.npa.go.jp/news/release/2022/2022 0104001jiko.html(参照 2022.05.27)(2) 疾患・服薬と事故の関係の調査分析,一般社団法人 日本自動車工業会,公益財団法人 交通事故総合分Result(sec)year30s 7.030s10.020s 4.020s 9.050s 6.050s 5.030s 4.013.01Table 3 Driver Response TimeParticipantNo.genderwomanmanmanmanmanmanmanave + 3Σ  : Fig. 9 Indication for Passengers参考文献 ドライバー異常検知後,異常確定に要する時間については,ドライバー応答時間のデータ計測の結果から,初見のドライバーでも最大13秒あればキャンセル操作が可能と確認できた(Table 3)。そこで,高速道路または自動車専用道路を60km/h以上で作動する居眠り検知によるDEAについては,ドライバー異常検知後,異常確定前に13秒間のシステム介入及びキャンセル待機時間を確保した上で,応答がない場合のみ減速停止するようにした。 ただし,一般道でも作動するドライバー異常姿勢検知においては,速やかに停車させて救護することを優先し,キャンセル待機時間を5秒間に短縮している。(2)同乗者に対するUI ドライバー運転不能時に車両を制御するDEAでは,パニックに陥った同乗者による不必要な操作介入が発生する可能性がある。そこで同乗者に今後の車両挙動を予知させることで,安心感を与え,不要な操作介入を抑制する。そのために車両制御までの猶予時間及び今後の車両挙動を表示し,不要な運転操作の介入をしないよう促す。 また,ドライバーの異常確定後についても,同乗者による不要な操作介入と作動による不安を抑制することをねらい,車の制御状態と車の注意喚起の状態をセンターディスプレーにグラフィック表示をする(Fig. 9)。 本稿では,DEAの技術について紹介した。3章では機能概要を説明し,4章ではドライバー異常検知の技術を,5章では車両制御について述べた。DEAの開発では,これまで積み重ねてきた先進安全技術を最大限活用しつつ,ドライバーが運転不能に陥った際の事故被害の軽減を支援するというDEAユニークな課題に対し,運転不能を検出するためのドライバー異常検知技術,また周囲の交通参加者の受容性を確保するために車外報知の開発に取り組んだ。加えて同乗者の安心感の醸成へも配慮したシステムとして設計した。 今後,対応可能なシーンの拡大のために,ドライバーの状態を正確に理解する技術の進化や自車周辺状況の検知性能,ロバスト性の向上が課題となる。また,効果を最大化するためには,自動車側の対応だけでなく,全ての道路ユーザーも含めた社会システムとして成立させることが重要であり,開発活動と並行して社会への周知活動についても検討していく。

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