マツダ技報 2022 No.39
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―118―能 4.1節で説明する。・ドライバーによる身長入力と,カメラがセンシングした眉間の位置情報から体格を推定することで推奨位置に自動調整する・マツダコネクトの画面のガイダンスに沿って姿勢を確認し微調整する2.4 顔認証機能を用いた車内環境の自動設定復元機 本機能は,顔認証機能を用いてドライバーを特定し,あらかじめ記録した車両装備の設定を復元することで,個人の好みに合った車内環境で運転していただくための機能である。 従来車種では,ドライビングポジション以外は車一台に一とおりの共通設定として記録され,複数ドライバーで好みの設定が異なる場合,ドライバー自身の操作で設定を変更していた。 これを解決するために,ドライバー・モニタリングカメラ・システムの顔認証機能を用いてドライバーを認証し,ドライバーごとに記録した設定と紐付け,設定を再現させた。 顔認証機能には,顔情報をドライバー・モニタリングカメラ・システムに登録する機能と,登録済みの顔情報と照合することで本人を認証する機能の2つがある。 登録する機能では,初めて使用するドライバーが迷うことがないように,マツダコネクトの画面上に「登録時の動作を示す画面」(Fig. 3)を載せている。また,認証する機能では,2種類の顔データを登録できるようにしている。例えば,眼鏡の装着ありと装着なしをそれぞれ登録できるようにして,使い勝手を向上させた。Fig. 3 Screen When Registering a Driver2.5 エントリーアシスト機能 本機能は,登録済のドライバーが楽に乗り降りできるよう,シートとステアリングホイール(以下ステアリング)を自動的に動かすことで下肢のスペースを確保する機能である。一般的に,運転しやすいシートとステアリング位置では,乗降時に靴先とトリムのスペースやステアリングコラムと膝のスペースが狭くなる。乗降時の動作を容易にするため,自動でシートスライドを後方に,ステアリングを上方に動かしスペースを広げている。降車時にドアを開けるまでに下肢スペースの確保を完了するために,電源OFFかつシートベルトバックルを外した時に作動させる仕様とした。3. システム構成とシステム動作の具体例3.1 システム構成 ドライバー・パーソナライゼーション・システムは11個のECU(Electronic Control Unit)で構成され,これらを車内通信ネットワーク(CAN/LIN)で接続している(Fig. 4)。 OMS(Occupant Monitoring System)CMUFig. 4 Diagram of the Driver Personalization System 開発期間の短縮と設計品質の確保のため,既存のシステムを最大限活用することを念頭に置き,システムの機能配分は,制御領域(アクチュエータや関連ECUを動かす領域)の大半を司るBCM(Body Control Module)と,HMI領域(ドライバーと車が情報をやり取りする領域)の大半を司るCMU(Connectivity master Unit)とに大別し,新規開発要素はこれらのECUを中心に実装する構成とした。 BCMでは,CMUからのドライバー操作による要求やOMSからの顔認証結果を受けて,ドライバー・パーソナライゼーション・システムを作動する制御指令を出力する。各ECUやESU(Electric Supply Unit)やHUD(Head Up Display)は,その指令を受信してサブシステムを動作させることでシステム全体として機能を実現している。 また,異常発生時のロバスト性を確保するため,関連するECUの多くが接続されるBCMが,異常箇所に応じ,全システムの停止や部分的に動作させる等を適切に判定する。更に,判定結果をCMUが常時監視することで,異常発生時にマツダコネクトの画面へ適切な情報を表示させ,ドライバーに不安や違和感を抱かせない仕様とし(Connectivity Master Unit)CANLIN(Vehicle Control VCMModule)Dash-ESU(Dash-Electric Supply Unit)BCM(Body Control Module)Door-ESU(D)(Door-Electric Supply Unit Driver)(Instrument Panel-Electric Supply Unit)IP-ESUDSMTTUDoor-ESU(P)(Door-Electric Supply Unit Passenger)HUD(Driver Seat Module)(UNIT-TILTELE)(Head Up Display) 自動設定復元機能は,ドライバーが着座後にドアを閉めることで顔認証を行い,ドライビングポジションや車両装備の設定を復元する機能である。これにより,運転前までに,登録した車内環境を提供可能な仕様とした。 車両装備の設定についてはドライバーの価値観に基づいて好みによって変更する項目と,ドライバーの価値観によらない普遍的な項目に分類した。前者に該当する250以上の項目の記録と自動復元に対応させることで,ドライバーの細かい好みの設定まで復元可能としている。なお,自動設定復元機能は家族や友人との車のシェアを想定し6人分まで対応している。

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