マツダ技報 2022 No.39
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(2)適切なドライビングポジションの定義 マツダが考える適切なドライビングポジションとは,楽で力を入れやすい姿勢と安心できる前方下方視界が両立している状態である(Fig. 7)。 1)楽で力を入れやすい姿勢 楽で力を入れやすい姿勢では,体を安定させられるため車の動きを正しく感じとれ,ステアリングやペダルを負担なく操作できる。この姿勢は,関節の動かしやすさ(関節受動抵抗)と力の出しやすさ(関節発揮トルク)で決まる。動作するときに抵抗となる関節受動抵抗は低く,かつ関節発揮トルクは高い,関節角の範囲で操作できることがよいと定義している。 2)安心できる前方下方視界 前方下方視界は,見え方により速度感や距離感,安心感が変わる。一般的に前方路面の不可視長が長いと高速での安心感が向上し,狭い道では距離感が低下する。この2つが両立する路面の不可視長範囲を,安心できる前方下方視界として定義している。―119― a)Seating information OMS b)Face recognition result4. 要素技術Fig. 5 Operation of the Restoration of the In-vehicle Environment Using the Face Recognition4.1 自動ドライビングポジションガイド機能(1)開発のねらい マツダは,適切なドライビングポジションを通して,多くのドライバーに「走る歓び」へ直結する以下の価値を感じてもらえる商品を開発してきた。・長時間の運転でも疲れにくく,運転を楽しめる・狭い路地やワインディング,緊急回避時も車両の動きを正しく感じられ車両を正確にコントロールできる・正しい位置に着座することで,衝突時の被害軽減できる これまで,商品として,人間特性に基づきペダル配置やシートの調整量等を最適化してきた。サービスとして,適切なドライビングポジションに合わせる手順をディーラーで説明し,取扱説明書に記載してきた。しかし,外部の方を招いた社内イベントの調査では,自分のドライビングポジションの正しさに不安を抱く人が多くいることが窺えた。一般ドライバーを対象とした調査では,適切なドライビングポジションで運転する人は全体の約半Fig. 6 Flow of Automatic Driving Position GuideFig. 7 Definition of Proper Driving PositionVCMCMUCBCMRegistered driverinformationarbitration of operation with other systemsOther systemsc)Collation of resultsCollation of face recognition resultandd)Operating statusof other systemse)ConfirmedrecognitionresultDoor-ESU(D)IP-ESUDash-ESUHUDDoor-ESU(P)DSMTTUている。 Fig. 4のとおり,制御を司るBCMに対し多くのECUが接続されるが,マスターをBCM,スレーブをBCM以外のECUとして機能配分を明確にすることで,並列開発を容易とし開発期間の短縮化を図った。3.2 システム動作の具体例 顔認証機能を用いた車内環境の自動設定復元機能を例にシステムの具体的な動作を説明する(Fig. 5)。 ドライバー席のドアを閉めることでドライバーの乗車を認識するとOMSが顔認証を開始(a),認証結果はBCMへ送信される(b)。認証結果を受信したBCMは,登録済のドライバー情報と認証結果を照合し(c),更に他のシステムとの競合動作の有無を確認する(d)。問題がなければ,確定した認証結果として各ECUにこれを送信する(e)。認証結果を受信した各ECU及びBCMであらかじめ記録していた設定を復元する。数程度であった。要因として,ステアリングテレスコピック(前後調整)などの調整機構の存在を知らない,調整の順番がわからない等である。 本機能は,ドライバーがガイダンスに沿って操作するだけで,容易に適切なドライビングポジションに合わせられることを目指し,以下の流れとした(Fig. 6)。

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