マツダ技報 2022 No.39
129/275

(3)適切なドライビングポジションの算出及び移動 1)身体寸法推定 ドライビングポジションを算出するためには,各関節間の寸法が必要である。しかし,各関節間の寸法は,同じ身長でも胴体と脚部の比率が一人ひとり異なる。提供すべきドライビングポジションは各関節間の寸法を把握した上で算出する必要がある。この課題に対して,マツダが所有するグローバルの身体データを基に,各関節間の寸法への分析をした結果,身長に対する胴体長比と各関節間の寸法に相関が高いことが分かった。本システムでは,身長と眉間の位置推定情報から身長に対する胴体長比を推定し,データベースと照合することで,身体寸法を算出するアルゴリズムを開発した(Fig. 8)。アルゴリズムにより,身長に対する胴体長比が異なる誰に対しても,適切なドライビングポジションを提供できる。また,シート高さなど自分の嗜好を持っている人にも,自分のドライビングポジションの近くまで自動的に移動しているため微調整で容易に調整できる。 4)車のガイダンスによる調節 体の硬さ・柔らかさやシート高さの高い・低いなど嗜好の違いは一人ひとり異なる。マツダの推奨する姿勢,視界の合わせ方をマツダコネクトの画面に表示し,ドライバー自身でガイダンスに沿って調整できるようにした。4.2 マツダコネクトの画面構成 ドライバー・パーソナライゼーション・システムの操作は主にマツダコネクトで行う。マツダの「認知・判断・操作」しやすい「人間中心」の思想に基づくHMIの一環として,安心感があり,簡単な操作だけで使いやすい画面構成を構築した。(1)ドライバー認証時の出迎え画面 システムがカメラでドライバーを認証すると,マツダコネクトの画面に登録されているドライバー名を表示し,特別感と安心感を演出している。車がドライバーを認証したことを表現するため,スキャンする表現のアニメーションを採用した。また,マスクの着用や顔の向きなどによりシステムが正しくドライバーを認証できなかった場合,自ら正しいドライバーを容易に選択できる画面構成とし,快適性を向上させた(Fig. 10)。―120―Fig. 8 Algorithm for Estimating Body Dimensions 2)運転姿勢算出とユニット位置算出 身体寸法推定で求めた各関節間の寸法を用いて4.1項(2)で定義している姿勢(関節角)と前方下方視界(明視距離)が両立する運転姿勢を算出する。算出した運転姿勢が取れるようシートとステアリング位置を決定する。ステアリング位置においては更にメーターが見えるように再計算して決定する。アクティブ・ドライビング・ディスプレー表示高さは,眉間の位置推定を基に前を向いた状態で煩わしくなく,眼球移動のみで表示内容が認識できる位置を算出する。ドアミラー角度は,ミラーに写る物体(車両)との位置関係を把握しやすくするため,上下角度は道路の映る位置がドアミラー中心になるように,左右角度は車体が写り込むように,角度を算出する。 3) 各ユニットの移動 2)で算出した位置情報を基に,BCMが各ユニットへ移動を指示する。移動前のステアリングやシート位置はさまざまであるため,挟まれや圧迫感等による不安を与えないように,空間を確保するように調整順序とした。例えば,シートを移動させた時にステアリングと前後方Fig. 9 An Example of the Movement Order in Automatic Driving Position Guide向の空間が少なくなるケースでは,まずステアリングを移動させることでドライバー前後方向の空間を確保するようにした。以降に文面と図面(Fig. 9)で代表例を示す。①ステアリング位置を最上端へ移動する。②ステアリング前方向を移動する。③シート/ドアミラー/アクティブ・ドライビング・ディスプレーを移動・回転させる。④シートの移動完了後に,ステアリングを下方向へ移動する。

元のページ  ../index.html#129

このブックを見る